蚊・ブユ・ヌカカ・マダニ…、小さくても厄介な夏に注意したい虫【医師監修】
- 作成:2021/07/24
夏日が続き薄着で屋外に出る機会が増えると、虫刺されも多くなりかゆみや腫れに悩まされます。また新型コロナウイルス対策で換気のために窓を開けることが増え、室内に侵入する虫も気になります。
この記事の目安時間は3分です
気をつけたい身近な虫
身近な虫刺されといえば日本全国に生息する「蚊」です。 “たかが蚊、されど蚊”で、地球上で最も多くの人命を奪っているのは、ウイルスや原虫などの病原体を持った蚊が、人の血を吸ったことで起こる「蚊媒介(かばいかい)感染症」なのです。多くは熱帯や亜熱帯で広がっていますが、日本での発生や海外から入ってくる可能性がある疾患にはジカウイルス感染症、デング熱、日本脳炎、マラリアなどがあります。2015年には、東京都内の公園で蚊に刺された海外渡航歴がない人がデング熱を発症し、厚生労働省から予防策が発表され大きなニュースになりました。
海や山で特に注意したいのは、ブユやヌカカ。朝夕に活動するハエに似た小さな虫で、衣服から出た皮膚を刺します。ブユに刺された直後は、あまりかゆみを感じませんが、半日ほどすると赤く腫れ、かゆみが強くなります。長引くと一年近くかゆみが続き、「慢性痒疹(ようしん)」というしこりになることもあるので厄介です。
また、山ではマダニ類にも注意が必要です。もともとは野生動物に寄生していますが、人にも咬み付き血を吸います。マダニに咬まれたら、無理に引き抜くとマダニの一部が皮膚に残り化膿するおそれがあるので、必ず皮膚科を受診しましょう。また、ライム病や日本紅斑熱など命に関わる感染症をもたらすこともあるので、咬まれてから数週間ほどは体調の変化に注意し、発熱などの症状が出たらすぐ専門医を受診してください。
虫刺され予防には肌を露出しないこと。また必要に応じて虫除け剤(忌避剤)※1を適切に使うと効果的です。
蚊に刺されただけでもアレルギーは起こる!?
蚊は血を吸うとき、口から血液を固まりにくくする物質を同時に注入します。刺されると赤く腫れてかゆくなるのは、その成分に対するアレルギー反応が起こるから。症状は個人差が大きく、なかには刺されたところがひどく腫れ上がり、リンパ節の腫れや発熱などの全身症状も現れる「蚊アレルギー(蚊刺過敏症)」を起こす人もいます。
蚊に刺されたときのアレルギー反応には2種類あります。おとなは刺された直後に小さな発疹ができてかゆくなり、数時間で収まる「即時型反応」がほとんどです。一方、蚊に刺された経験が少ない乳幼児は刺された直後は無症状で、翌日以降に赤いしこりができてかゆくなる「遅延型反応」が多く見られます。成長とともに繰り返し蚊に刺されると、幼児期から青年期にかけては即時型反応と遅延型反応の両方が見られるようになり、壮年期になると赤みや腫れなどの反応は少なくなります。高齢者が蚊に刺されてもかゆくならない人が多くいるのは、そのためと考えられています。
ステロイド剤の使いすぎに注意
虫に刺されたときは、どんなにかゆくてもかかないこと。かき壊した傷から黄色ブドウ球菌などに感染、水ぶくれやただれが体中の皮膚に広がる「とびひ(伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん))」になるおそれがあります。かく前に、まず市販の外用薬を使ってかゆみを抑えます。
刺されてすぐのかゆみの場合は、清涼成分やかゆみを抑える成分(抗ヒスタミン薬)が入っているものを、翌日以降にかゆみが起こる場合にはステロイドを含むものが効果的です。
ただし、ステロイドには長期間使いすぎると皮膚が委縮して固くなる、ニキビができるなど副作用も報告されています。使用する場合は説明書をよく読み、5~6日間使用して改善しないときは専門医への受診をお勧めします。また、乳幼児への使用は医師や薬剤師など専門家に相談しましょう。
※1 虫除け剤(忌避剤)の代表ディートには子どもに対する以下の使用上の注意がある。顔に使用しない。生後6か月未満の乳児には使用しない。2歳未満の幼児は1日1回、2歳以上12歳未満の子どもは1日1~3回の使用にとどめる。
四類感染症の対象疾患となっている主な蚊媒介感染症
参考サイト
公益社団法人皮膚科学会
厚生労働省/蚊媒介感染症
厚生労働省ダニ媒介感染症
東京都感染症情報センター/代々木公園を中心とした都内のデング熱国内感染事例発生について
東京都感染症情報センター/蚊媒介感染症 Mosquito-borne Infection
九州大学医学部皮膚化学教室
東京女子医科大学病院 腎臓病総合医療センター 腎臓内科
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。