鎮痛剤はどれも一緒? 飲み過ぎると効かなくなる? 婦人科医が教える、上手な痛み止めの飲み方
- 作成:2021/09/17
生理の痛みが強ければ痛み止め(鎮痛剤)を飲みますよね。ドッグストアには生理痛用の鎮痛剤がいくつも並んでいますが、どれも中身は同じで販売している会社や商品名だけが違うのでしょうか? 痛み止めを飲む回数が増えると効かなくなるという話を聞きますが、これは本当なのでしょうか? 今回は生理痛に使う鎮痛剤についての疑問を解説していきます。
この記事の目安時間は3分です
鎮痛剤は成分で選ぶ。一番効くのはどれ?
薬局やドラッグストアで販売されている鎮痛剤の成分は、主にアスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、アセトアミノフェンの4つです。
このうちアスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウムは「NSAIDs」(非ステロイド性抗炎症薬)に分類されます。NSAIDsは痛みの原因となる場所での「プロスタグランジン」という物質の産生を抑制し、炎症を抑えます。プロスタグランジンは痛みの原因物質だけではなく子宮を収縮させる物質でもあるので、子宮の強い収縮も和らげることにより生理痛に効果があります。
一方、アセトアミノフェンにはプロスタグランジンの産生を抑える効果はほとんどなく、どちらかというと脳に作用して痛みを感じにくくすると言われていますが、実はその仕組みはまだ完全には解明されていません。それでも痛みを抑える効果や安全性はちゃんと確認されていますので、安心して内服できます。
では、どの鎮痛剤が生理痛には一番効果があるのでしょうか?
理論的には痛みの原因であるプロスタグランジンの産生を抑えるアスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウムがよく効きそうですが、必ずしもそうではありません。アセトアミノフェンの方が効くという声も患者さんからはしばしば聞かれます。
鎮痛剤の効き方はかなり個人差があるので、いくつか試してみて自分に合った鎮痛剤を選んでもらうのがいいと思います。
飲むタイミングは? 昔はぎりぎりまで我慢と言われたが…
鎮痛剤を飲むタイミングはズバリ「痛くなった時」です。どうしても我慢できなくなった時だけ鎮痛剤を飲んでいるという方がおられますが、実は我慢するだけ損をしています。
生理痛の原因は子宮内膜から放出されるプロスタグランジンです。プロスタグランジンが神経細胞を刺激して痛みとして脳が感知します。また、プロスタグランジンによって子宮が強く収縮することで、さらに痛みが強くなります。
前述の通り、NSAIDsはプロスタグランジンの産生を抑制することで効果を発揮します。プロスタグランジンがすでに大量に放出されてしまってから内服しても、痛みを抑える効果が限られてしまう可能性があります。痛み止めは早めに内服するようにしましょう。
鎮痛剤を飲み過ぎると効かなくなると思っている方もいるかと思いますが、そんなことはありません。頭痛の場合は鎮痛剤の服用回数が多くなると、鎮痛剤のせいで頭痛が起こりやすくなる「薬物乱用頭痛」が起こることがあります。生理痛の場合はそのようなことは起こりませんので、我慢せず痛い時に内服してください。
痛すぎて鎮痛剤を多めに飲んでいるけど大丈夫?
鎮痛剤は飲めば飲むほど効くわけではありません。場合によっては胃の不快感など副作用だけが強く出てしまうこともあります。必ず用法・用量を守って服用してください。
鎮痛剤を内服しても痛みが取れない場合は、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が隠れているかもしれません。用量以上に飲むようなことはせず、婦人科を受診し診察を受けてください。
鎮痛剤の副作用で胃が痛くなる…。対策は?
プロスタグランジンは痛みを起こす物質ですが、胃粘膜の保護作用や、胃の粘液を分泌して酸性になりすぎることを防ぐ役割もあります。NSAIDsは胃でのプロスタグランジン産生も阻害するため、胃の粘膜保護作用が低下し、胃炎や胃潰瘍の原因になることがあります。鎮痛剤を飲むと胃が痛くなることがあるのはこのためです。
アセトアミノフェンにはこのような作用はないため、胃痛が起こることはほとんどありません。
市販の鎮痛剤には胃粘膜を保護する成分が一緒に含まれている商品もありますので、胃が痛くなりやすい方はアセトアミノフェンが含まれている鎮痛剤か、胃粘膜を保護する成分も一緒に含まれている鎮痛剤を飲むようにしましょう。
鎮痛剤は生理中に起こる痛みを一時的に和らげるものであり、治療薬ではありません。鎮痛剤を飲む回数が増えてきた、以前は効果があったのに最近痛みが消えない、そうなった時は婦人科を受診するタイミングです。生理痛の原因となる病気がないかどうか確認が必要ですし、鎮痛剤以外の薬が必要なのかもしれません。
痛みを我慢せずに婦人科で相談してみてください。
婦人科医・医学博士
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。
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