「とりあえず避難所へ」は間違い?防災マニア医師が語る「いざというときの備え」
- 作成:2021/09/30
いつ自らの身に降りかかってくるか分からない、災害。一方でなかなか自分事として考えづらく、その準備ができていないという人も多いかもしれません。今回は、防災情報を発信している内科医であるDr.ソナエル氏が、防災において広く市民が知っておくべきポイントをご紹介します。今回のテーマは、震災時の避難場所について。「被災したらとりあえず避難所へ」という漠然と考えに対して、警鐘を鳴らしています。
この記事の目安時間は3分です
災害対策基本法において災害とは、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう」と定義されています。2021年現在流行している新型コロナウイルス感染症も、直接的被害や経済損失を考えると、災害として認識できるかもしれません。
これら災害対策への備えは、自宅、職場、通学・通勤路など自分が被災する可能性がある場所の災害リスクを知っておくことが第一です。最低でも自宅の災害リスクだけは必ず把握しておいてください。
災害リスクを確認し、避難場所を想定しておく
国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」では、「重ねるハザードマップ」「わがまちハザードマップ」というものが無料で閲覧できます。「重ねるハザードマップ」では地図から詳細な災害リスクを検索することができ、「わがまちハザードマップ」では全国の市町村が作成したハザードマップを検索することができます。
時々情報が更新されることがあるため、年に1〜2回は確認しておきます。
ハザードマップで自宅の災害リスクを把握したら、災害が発生した場合に逃げるか、留まるかを想定します。巨大地震が発生し、津波のリスクがある場所に住んでいる場合はすぐに逃げる必要がありますし、高潮や土砂災害のリスクがある場所に住んでいる場合は準緊急的に避難する必要があります。緊急避難が必要な場合、ここで初めて「防災グッズを◯◯点詰め合わせた非常用リュック」が役に立つことになります。
災害が発生しても必ずしも避難が必要とは限らない場合もあります。
例えば私の場合、マンションの中高層階に住んでおり、ハザードマップでは数メートルの洪水または内水氾濫のリスクがありますが、津波・高潮、土砂災害のリスクは低くなっています。新耐震基準を満たしたマンションのため、巨大地震でも倒壊の可能性は低く、たとえ豪雨や台風で洪水・内水氾濫が発生したとしても自宅にいれば死亡のリスクは極めて低いといえます。自宅マンションが一定期間孤立しても、非常用トイレや食料などを備えていれば復旧するまで在宅避難が可能です。そのため私は災害時には在宅避難を心に決めています。
被災した時、避難所に行けば大丈夫というのは大間違い
災害が発生したら「避難所へ行けば大丈夫」と漠然と考えている方がいらっしゃいます。しかしこれは誤りです。
そもそも避難所の収容可能人数はその地域の人口より、通常、はるかに少ないのです。
また避難所の環境は決してよくはありません。多くの避難者が集まればそれだけ個々のスペースは限られ、プライバシーもなく、トイレの数も圧倒的に足りず、当然清掃が行き届かないため不衛生な状態となります。食料など物資も十分量ある保証はありません。女性や子供が狙われる性犯罪も実際に発生しています。特に、2021年時点で流行している新型コロナ感染症のリスクも問題になります。
避難所に行けば行政が何とかしてくれるわけではなく、あくまで場所と多少の物資を提供してくれるのみで、基本的には避難者達で運営することになります。避難所に行くのは、在宅避難が困難となった時の最終手段であると肝に銘じておく必要があります。
ちなみにここで述べているのは、避難所(指定避難所)のことです。
津波や火災などから緊急的に安全確保を行う場所が避難場所(指定緊急避難場所)で、災害により自宅で生活を送ることが困難となった場合に、一時的に滞在し生活を送る場所が避難所(指定避難所)です。
防災対策を日常に取り入れ、自然災害から身を守る
近年ではほぼ毎年自然災害が発生しており、災害大国日本において防災対策は避けては通れないものです。
地震調査研究推進本部地震調査委員会では、マグニチュード8~9クラスの南海トラフ地震(想定最大死者数 約32.3万人)の30年以内の発生確率が70~80%、マグニチュード7程度の首都直下地震(想定最大死者数 約2.3万人)の30年以内の発生確率は70%程度と予想しています。ほぼ必ず起こるといっても過言ではないですし、今この瞬間に発生してもおかしくない状態といえます。
ご自身の命、ご家族の命を守るためにも、被災後の生活を乗り切るためにも、防災対策を日常に取り入れて日々の防災を意識していただきたいと思います。
消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医
神奈川県生まれ。現在は関東で内科医として勤務。
長男誕生をきっかけに家族を守るということに直面し、防災に目覚める。知識を得ていくにつれ防災にのめり込み、現在では防災好きが高じてInstagramやTwitterで防災対策を発信している。
認定特定非営利活動法人 日本防災士機構認証 防災士。
Twitter:@Bousai_love_Dr
Instagram:bousai_daisuki_doctor
ウェブサイト「Dr.ソナエル@内科の防災図書館」
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