災害時に知っておきたい、お役立ちスマホ活用術

  • 作成:2022/07/19

石川県の能登半島で、震度5強・震度6弱を観測した地震は記憶に新しいところです。その後も地震は続き、6月22日には通信機器の障害も起こりました。不安の中、どのようにして情報を得たらよいのでしょうか。 今回は、地震をはじめとした災害時に役立つスマートフォン(以下、スマホ)の使用方法や「防災系アプリ」についてDr.ソナエル氏に解説していただきました。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

災害時に知っておきたい、お役立ちスマホ活用術

災害発生時の通信状況を理解しておく

大規模な災害が発生すると、安否確認のための電話により通信が集中する「輻輳(ふくそう)」が発生し、通信速度の低下やダウンにより、回線がつながりにくくなります。また、地震の揺れなどにより基地局や通信用機器そのものが損壊して通信が困難となる場合もあります。通話での連絡はなるべく控えるようにしましょう。

停電が発生した場合には、通信回線の基地局はバッテリーで数時間から最大24時間程度稼働、なかには発電機を備えている基地局もあり、自家発電で稼働することもあります。そのため、停電時でも基地局や通信用機器に損壊がなければ、スマホで情報収集や安否連絡ができる可能性があります。

通信回線がつながらない場合でも、Wi-Fiに接続できれば、インターネット回線につながるため、Wi-Fi経由で通話やアプリで情報を得ることができます。災害時に通信回線がつながりにくい場合、街中のフリーWi-Fiスポットや、近くでつながるWi-Fiへの接続を試してみましょう。

また、大規模災害が起こったときには、通信回線に頼らず情報収集や安否確認ができるように、被災地域でNTTドコモ・au・ソフトバンクが垣根をこえて無料開放する、公衆無線LANサービス(公衆Wi-Fi)「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」があり、パスワードなどを必要とせずWi-Fiに接続することができます。ただし、「00000JAPAN」は暗号化やユーザー認証がなく、セキュリティが低いため、悪意ある第三者が設置したなりすましWi-Fiやパスワードやクレジットカード情報の漏洩などの注意が必要です。

災害発生時、まずはスマホを省電力モードに切り替える

当たり前ですが、スマホは電池が切れれば使うことはできません。スマホのバッテリーを長持ちさせるためにも、まずは液晶画面の明るさを落とし、消費電力を下げましょう。これが節電に最も効果的だと言われています。また、iPhoneやAndroidなど、ほとんどのスマホには省電力モードが搭載されていますので、災害発生時は省電力モードに切り替えることも忘れずに。いざという時のために、省電力モードの設定方法を普段から確認しておきましょう。

外出先でのバッテリー切れを可能な限り予防するためには、普段から外出前はスマホを充電しておき、万が一外出先で充電が切れても困らないように、モバイルバッテリーを普段から持ち歩くと安心です(普段充電式モバイルバッテリーを使わないなら、乾電池式モバイルバッテリーがおすすめ)。

「機内モードオフ」「GPSオフ」

通信環境が悪い場合、「機内モード」で一時的な通信機能をオフにし電池の消費抑制をする工夫も一手です(ただし、緊急地震速報などの緊急情報を得ることができなくなってしまいます)。他にも、位置情報サービス(GPS)の設定オフも節電効果がありますが、防災系アプリの場合、GPS情報から緊急速報や警報を発報する場合があるため、必要なアプリのGPSは適宜オンにしておきましょう。

防災系アプリとはどのようなもの?

「防災系アプリ」とは、地震や津波の発生時の緊急避難情報の通知や、台風や洪水情報、安否確認できるものなどさまざまな防災に役立つ機能を持ったアプリです。災害専用というわけではなく、例えば、天気予報やSNSアプリのように、普段使いもできるフェーズフリーなものも広い意味で防災系アプリに含まれます。災害大国日本においては、非常に便利な防災系アプリが数多く公開されています。

スマホは、災害時のさまざまな情報収集や家族の安否確認のために非常に重要なツールであり、このようなアプリの使用にはスマホが必要です。多くの方がスマホに防災系アプリを入れておくことにより、いざ災害が発生しても速やかに避難情報などを得られ、情報を共有し、減災へとつなぐことができます。

スマホに入れておきたいおすすめのアプリ

防災向けのアプリはほとんどが無料で、十分な機能が使えます。災害を想定しスマホに入れておきたいおすすめアプリを、連絡用、情報収集用、徒歩帰宅の支援用、その他防災に役立つアプリなどに分けて考えます。

家族の安否確認や連絡用のアプリ(LINE、災害用伝言板アプリ)

災害発生時には家族の安否確認の手段が問題となります。NTTドコモ モバイル社会研究所では、2021年10月に防災に関する調査を行っており、災害時の連絡手段を家族で決めている人は33.5%と発表しています。大規模災害の発生時、通信回線の混雑(輻輳)を避けるため、通話は控えるようにするべきです。また、できればメッセージが文字で残るアプリを使うと、後々内容を確認しやすく便利です。

LINE

LINEは、東日本大震災で通信手段が大打撃を受けた経験から、緊急時のホットラインとして使えるよう、通信回線が絶たれても使えるメッセージアプリとして2011年6月に誕生しています。通信回線がつながらなくても、インターネットにつながっていれば利用でき、メッセージの「既読」表示は、災害時の安否確認に役立ちます。グループLINEを作成して家族の連絡網にしたり、位置情報を送信したりすることができるため、必ず入れておくべきアプリです。
ちなみに、我が家では「家族の防災グループLINE」を立ち上げています。災害発生時は誰かがメッセージを最初に送り、防災グループLINEを素早く立ち上げて開設するように、あらかじめ家族内で決めています。

災害用伝言板アプリ

NTTドコモ、au、ソフトバンクの大手通信キャリア3社からは公式の災害用伝言板・災害ダイヤルアプリが公開されています。LINEがあれば事足りますが、何らかの原因でLINEが機能しなくなる可能性も考え、念のためダウンロードしておいて損はありません。
格安SIMの多くは災害伝言板・災害ダイヤルのアプリに対応していませんが、「災害用伝言ダイヤル(171)」で音声を録音、または「web171」という災害用伝言板でメッセージを残すことができます。

緊急地震速報や避難情報など防災情報を得るためのアプリ

災害時に備え、緊急地震速報や避難情報などが得られるアプリを入れておきましょう。もともとスマホには通信回線を利用した、緊急地震速報などの緊急速報を通知する機能が備わっていますが、通信回線がダウンしていると通知することができません。一方で防災系アプリは、通信回線かWi-Fiどちらか一方につながっていれば、GPSと連動して緊急速報を通知してくれます。

災害時に知っておきたい、お役立ちスマホ活用術

災害が落ち着いたあと、徒歩帰宅を支援してくれるアプリ

大規模災害が発生すると、公共交通機関はマヒします。大都市の場合には帰宅困難者の行動として、無理に帰らず、発災後72時間は職場や商業施設などにとどまり、その後は徒歩帰宅を行うことになります。長距離の徒歩帰宅を行う場合、地図が必要になります。紙の地図を持ち歩いていればよいのですが、ない場合は地図アプリに頼ることを考えなくてはなりません。
大規模災害時は通信網もマヒしている場合が想定されます。基本的に地図アプリは、回線につながっている状態でないと地図を読み込まず、使うことができません。そのため地図データをあらかじめスマホにダウンロードでき、オフラインでも地図表示できるアプリを入れておきましょう。

  • Googleマップ…最も広く使われるGoogleマップ。設定画面より自由な範囲の地図データをあらかじめダウンロードし、オフラインでも地図表示することができる。
  • MAPS.ME…オフラインに特化した地図アプリ。県単位で地図をダウンロードし、保存できる。

その他、入れておくと便利なアプリ

以下に示したニュースや天気予報アプリなど普段使いもできるフェーズフリーなアプリを入れておくのもおすすめです。これら以外にも、近くのトイレや給水ポイント、Wi-Fiスポット、インターネットラジオ、SNSなどのアプリなども防災に役立ちます。

  • 東京都防災アプリ(東京都の防災冊子「東京防災」のアプリ版。他の道府県でも利用可能)
  • radiko(スマホで通信回線、もしくはWi-Fiなどインターネット経由でラジオを聞くことができるアプリ)
  • タウンWiFi(街中のWi-Fiスポットを検索できたり、Free Wi-Fiに自動接続してくれるアプリ)
  • Twitter(誰でも簡単にリアルタイムに情報を発信したり得ることが可能。デマ情報には注意が必要)
  • ウェザーニュース(気象アプリ)
  • Yahoo!ニュース(ニュースアプリ)
  • mymizu(給水アプリ)
  • トイレMAP(トイレの場所を示すアプリ)

ここにあげたアプリは、代表的な防災アプリです。このほかにも有用な優れたアプリは多数あり、なかには地域に特化したアプリなどもあります。災害時にあわててダウンロードしようとしても間に合いませんので、平時からダウンロードしておき、設定を確認し備えておくことが重要です。

また、そもそもスマホには緊急速報(緊急地震速報、津波警報、Jアラート)を受信する機能が備わっています。これらの通知をオンにすることも忘れずに。アプリを入れて満足するのではなく、平時からアプリの操作や使いやすさを確認して災害時の備えにしておきましょう。

アプリ以外の防災情報

また、政府や関係機関の公式アカウントをフォローしておくのもおすすめです。首相官邸(災害・危機管理情報)、総務省消防庁、防衛庁、自衛隊、お住まいの自治体の公式アカウントなどを日頃からフォローしておきましょう。また、公式アカウントは名前の右側に青いチェックマーク(認証バッジ)がついており、偽アカウントとの区別に役立ちます。

災害時に119番と110番が使えない場合、緊急救助を要請する手段としても使用できます。「#救助」とハッシュタグをつけ、状況説明、写真、位置情報を添付することにより、救助につながる可能性を高めることができます。

消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医

神奈川県生まれ。現在は関東で内科医として勤務。
長男誕生をきっかけに家族を守るということに直面し、防災に目覚める。知識を得ていくにつれ防災にのめり込み、現在では防災好きが高じてInstagramやTwitterで防災対策を発信している。
認定特定非営利活動法人 日本防災士機構認証 防災士。

Twitter:@Bousai_love_Dr
Instagram:bousai_daisuki_doctor
ウェブサイト「Dr.ソナエル@内科の防災図書館」

病気・症状名から記事を探す

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師