慢性前立腺炎が治らない…マスターベーション連続4回で悪化?

  • 作成:2021/11/17

性に関するお悩みは、身の回りの人にはしづらいもの。この連載では、そんな性にまつわるトピックに対して、専門の医師が答えていきます。今回解説するのは、慢性前立腺炎に悩む男性からのお悩みです。

この記事の目安時間は3分です

慢性前立腺炎が治らない…マスターベーション連続4回で悪化?

【今回のお悩み】
2年前から慢性前立腺炎を治療しており、なかなか良くならずストレスもあり、今日1ヶ月半ぶりにマスターベーションを連続で4回してしまいました。
終わったあとシャワーで洗っていたら、ペニスがズキズキ痛みだし、排尿痛も以前よりも痛みが強くあります。下着に擦れるだけでも痛いです。
さすがに4回はやりすぎたと思い、悪化したのではないか不安です。
忙しいなか申し訳ないのですが、アドバイスをよろしくお願いします。

【医師からの回答】
久しぶりとはいえ、急に4回はがんばりすぎましたね。
僕にも経験がありますが、連続で4回もすれば、後半は射精もしにくくなってくるので、力強くペニスを擦ることになるでしょう。そうすると、ペニスの皮膚が赤むけ(表(ひょう)皮(ひ)剥(はく)離(り))になりがちです。定期的に擦っていればペニスの皮膚は鍛えられますが、たまにしか擦らなければ摩擦に弱くなります。排尿時以外にペニスを使わなくなった高齢者のペニスの皮膚は、すぐ裂けたり、表(ひょう)皮(ひ)剥(はく)離(り)したりします。下着に擦れて痛いのはそれが原因でしょう。

ペニスの痛みと排尿時の痛みは、前立腺炎による痛みと考えてよいでしょう。射精が近づいてくると前立腺の血流は増加し、前立腺液を分泌し、前立腺の膀胱側の出口である内尿道口が閉じます。精液の15~30%は前立腺からの分泌液です。射精時には、精巣上体(副睾丸)から精管を通って送られてきた精子と、精嚢(のう)からの分泌液(精液の40~80%)が射精管を通って前立腺部尿道で前立腺液が加わり、前立腺のリズミカルな収縮により、精液として尿道から射出されます。つまり、射精という現象の大部分は、前立腺が舞台であり主役なのです。

慢性前立腺炎は、文字通り前立腺に炎症がある(厳密に言えば炎症があるという証拠がないものも含まれる)わけですから、たくさん射精をすれば前立腺の炎症が悪化してもおかしくないでしょう。例えるなら、肩に痛みのある投手が4試合連続で先発完投したのと同じようなものです。ですので、前立腺を少し休ませるとよいでしょう。

ただ、射精をすることが必ずしも悪いというわけではありません。前立腺周辺の血液のうっ滞(血流が静脈内などに滞ること)が、慢性前立腺炎の病態の一つとして考えられています。この前立腺の血液の循環を改善する目的で行われる前立腺マッサージは、治療目的できわめて古くから用いられています。慢性前立腺炎に対する前立腺マッサージの治療効果については、明らかなエビデンスはありませんが、患者さんおよび治療者に根強いファンのいる治療です。射精の際に前立腺の血流は増加しますので、血液の循環が改善する可能性があります。また、射精することにより、前立腺内にある炎症細胞や細菌が前立腺からの分泌液とともに排出されることも、症状の改善につながる可能性があります。

したがって、4回連続はやりすぎだけど、適度な射精は必要というのが僕の見解です。痛みが治まったら、症状が悪化しない程度に定期的な射精を心掛けるのがよいでしょう。

今井伸 先生

聖隷浜松病院 リプロダクションセンター長・総合性治療科部長

1997年 島根医科大学(現・島根大学) 卒業
島根医科大学を経て、2005年1月より聖隷浜松病院
2019年4月より現職
専門領域は性機能障害・性科学・生殖医療
「射精道」を提唱し、男子性教育の普及に力を入れている。

著書 等
『中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド (一部執筆)』(日本評論社)
『セックスセラピー入門 (一部執筆)』(金原出版)
『中高年のための性生活の知恵(共著)』(アチーブメント出版)
『人生100年時代をなかよく生きる シニア世代の愛と性(監修)』(平原社)

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