男性の2人に1人がかかる?前立腺炎の代表的な症状とは

  • 作成:2016/08/31

前立腺炎は男性だけがなる病気で、尿がでにくい、排尿時の痛みなどが代表的な症状です。珍しい病気ではなく男性の25%~50%が一生のうちにこの病気になるとされています。前立腺炎の症状や原因、治療法などについて紹介します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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前立腺炎の代表的な症状

目次

そもそも前立腺とは?

前立腺は男性だけがもつ生殖器の一部で、女性にはありません。

大きさは直径2センチから3センチ程であり、形状や大きさから「クルミのよう」と言われる事がありますが個人差があります。

生殖器の一部と言っても陰茎(いんけい)や睾丸(こうがん)のように外部に露出しているわけではなく、 膀胱と直腸に挟まれるようにして体の奥にあります。

また、前立腺内部には膀胱から伸びる尿道と、睾丸で作られた精子が通る精管の二つの通路があり、 前立腺の中で二つの通路が合流して陰茎へと伸びています。

尿(おしっこ)を身体の外にだすことを排尿(はいにょう)といいますが、排尿の際には精管を閉じて尿の逆流を防ぎ、 射精の時には精管を開いて精子を通すなど、日常生活の中でも重要な役割を担っています。

前立腺には他にも様々な機能があると考えられていますが、中でも特に特に重要な機能が「前立腺液(ぜんりつせんえき)」の 分泌と精液の混合です。

前立腺が作る前立腺液は精液全体の3割ほどを占めており、 残りの7割は前立腺に隣接する精嚢(せいのう)から送られる精嚢液となっています。

これら二つの分泌液は精子に栄養を送り保護する働きがあり、この分泌液の中に睾丸から送られた 精子が混じる事で精子は生殖能力を維持したまま卵子へと辿り着く事ができるようになるのです。

ちなみに、精液特有の臭いは前立腺液に含まれるスペルミンという成分が生み出す臭いであり、 精子そのものの臭いというわけではありません。

ただ、前立腺の機能についてはまだ良くわかっていないことも多いのが現状です。

他の機能がある可能性が指摘されており、前立腺にはまだまだ知られていない機能があるのかもしれません。

前立腺炎の代表的な症状

前立腺炎と一言に言っても、慢性か急性か、細菌性か非細菌性かで症状は異なってきます。

さらに、同じ原因のものでも症状の出方には個人差があり、重い症状のケースもあれば極めて軽症なケースもあり、 一概に言えるものではありません。

前立腺炎における特徴的な症状は、排尿の回数が増える、排尿の時に痛みがある、排尿がスムーズにいかない(尿が出にくい)、というものがあります。また、射精時に痛みがでるというのも前立腺炎の症状の一つです。

前立腺付近に違和感が出るだけではなく、その他にも睾丸、陰嚢、下腹部、陰茎に加えて、腰、恥骨、 下半身に広く痛みや不快感が出ることがあります。

血尿や精液の変色などの症状が現れることもあり、人によって千差万別です。 細菌性のものであれば発熱を伴うことも少なくありません。

これらの症状がはっきり現れるとは限りません。痛みと言えるほどではなく、 なんとも言えない不快感や痺れなどの形で症状が出ることもあります。

急性前立腺炎であれば発熱と共に耐え難い痛みが襲うこともある一方、 慢性前立腺炎の場合には殆ど自覚症状が出ない事もあります。

自覚症状がなくとも前立腺自体が腫れ上がるため、超音波検査や直腸診などで 前立腺炎自体を発見することはできます。とはいえ、それだけでは原因が分からず治療ができません。尿検査や血液検査を用いて前立腺炎の原因を把握し、適切な治療をしていくことになります。

前立腺炎の原因 細菌性とそれ以外の違い

前立腺炎の原因は大きく分けて、細菌性かそれ以外に分けられます。

細菌性の前立腺炎は細菌が尿道や血液を通じて前立腺に入り込むことで起こりますが、 それ以外の原因については様々な説が提唱されているもののまだよく分かっていません。

しかし、細菌感染については多くの事が分かっています。尿道は陰茎にある尿道口で外部に開いているため、 様々な雑菌が入り込む可能性があります。

不衛生な下着を使っていれば下着から、排便時に便が少しでもついた手やトイレットペーパーで触れれば便から、 性交時に相手の性器が細菌感染していれば性器から、細菌やウイルスが入り込みます。

また、治療や検査の際に使った医療機器が細菌感染の原因となることもあるため、何らかの機材を使った後は注意して経過をみます。

体内に入った細菌が前立腺内部の中で繁殖すると、細菌を除去するための免疫機能によって炎症反応が起こります。 炎症反応が起こると細胞が膨張し、膨張した細胞が神経を圧迫すれば痛みの原因となります。 その膨張した細胞が、尿道や精道を妨げれば排尿や射精時に違和感や痛みが出る原因となります。

どこで細菌が繁殖して炎症が起こるか、どんな炎症の起こし方をするかで症状の出方は変わりますが、 細菌性であれば治療法は抗菌治療が主になるでしょう。

細菌感染による前立腺炎も恐ろしいですが、実は細菌感染以外の原因で前立腺炎を起こすケースもあります。 原因は不明とされていますが、排尿障害などの別の疾患による物理的刺激に加え、 デスクワークや自動車・自転車・バイクなどの長時間の運転によって前立腺が圧迫される事が原因であると考える医師もいます。

医学的にはっきりしているわけではありませんが、長時間同じ姿勢でいることは別の疾患リスクも高めるため、 出来る限り避けるようにすると良いでしょう。

前立腺炎の3つの種類とは

前立腺炎には大きく分けて「急性前立腺炎」「細菌性慢性前立腺炎」「非細菌性慢性前立腺炎」の3つがあります。

場合によっては、細菌性かどうかを分けず「急性前立腺炎」と「慢性前立腺炎」と呼ぶこともありますが、 慢性前立腺炎には細菌性と非細菌性があると覚えておくと良いでしょう。

「急性前立腺炎」は、細菌感染によって引き起こされる前立腺炎です。 急性という名前の通り症状が急に現れ、排尿痛や排尿障害と同時に発熱を伴う事が多くなります。 発熱は高い時には40℃以上になり、排尿の際はかなりの痛みが出ます。

感染力の強い大腸菌が原因となることが多く、尿道から前立腺に感染し、前立腺から血液を通して 全身に細菌が広がっている状態です。このケースでは前立腺がんの腫瘍マーカーも反応するため、 詳しい検査によって前立腺がんではないことを確認する必要が出てくるでしょう。

「細菌性慢性前立腺炎」は、急性前立腺炎と同じく細菌感染が原因となります。 しかし、細菌の感染力が低く体の抵抗力が強い場合、全身に細菌が広がることもなく、 炎症も酷くならないので症状が緩やかです。

症状としては頻尿・排尿障害・排尿痛・射精痛などが中心で、 痛みや違和感などは徐々に強まっていく傾向にあります。非細菌性とは違い、 尿などから細菌が検出されるため原因がすぐに分かり、抗菌薬治療によって短期間で治ることも多いです。

「非細菌性慢性前立腺炎」は、前立腺痛や前立腺症のように呼ばれる事もあり、 多くの場合は同じ症状を指します。非細菌性慢性前立腺炎は細菌感染が原因ではない、 もしくは細菌を全く確認できなかった前立腺炎を意味し、原因不明とされる事が多いです。

明確な原因が分からないため治療が難航する事が多く、なかなか症状が改善しないケースもあります。 症状も前立腺以外の部分に及ぶことが多く、陰部周辺や骨盤周辺に違和感が出ることがあり、 前立腺炎が別の疾患や血行障害などによって誘発されている可能性も指摘されています。治療が長期化する可能性もあります。

前立腺炎の治療法

前立腺炎の治療は細菌性か非細菌性かで治療方針は大きく異なってきます。

細菌性の場合には、尿検査などで発見した細菌に適した抗生物質を投与する形で治療を進め、 最適な抗生物質が投与されれば1週間前後で治ることが多いです。症状が重篤で尿道が塞がっており、

完全に尿が出なくなっている場合には膀胱に穴を開けて排出するか、 中が空洞になっている医療用の柔らかい管である「カテーテル」を使って尿道を開く治療を行います。 これらは炎症が収まれば必要なくなるため、一時的な対症療法です。

細菌感染が原因であれば抗生物質で治るのですが、厄介なのは非細菌性の前立腺炎です。 非細菌性であっても細菌が検出できないだけで実は細菌感染が原因となっている場合があるため、 抗生物質の投与は医師の判断によって行われる事があります。

この場合、細菌が特定できていないので、複数の抗生物質を 一定期間ごとに飲んで効果を確かめることになるでしょう。

抗生物質の効果なく、細菌感染が原因ではないという確信がある場合には炎症を抑える 薬や尿道や膀胱の筋肉をゆるませる薬排尿障害に効果のある「αブロッカー」などが投与されます。

他にも血行を良くする薬や漢方薬、生活改善や食生活の改善などが試みられる事があり、 確実に効く治療法というのが存在しません。

治療の効果があったと思って治療をやめると再発したり、しばらくなんともなかったのに再発したりする事があるため、治療が長期化する事も珍しくありません。新しい治療法として、海外で体外衝撃波結石破砕術と呼ばれる衝撃波によって結石を破壊する治療法が実施されることもありますが、日本ではまだ認められていません。

前立腺炎を予防するには

細菌性の前立腺炎を予防するためには、大前提として陰茎や尿道口を清潔に保つことです。

むやみに手で触らず、排便時には特に注意しましょう。性交が原因で細菌感染することも多く、 パートナーの協力も必要です。コンドームなどの使用で感染も防げるため、積極的に活用すると良いでしょう。

非細菌性の前立腺炎の場合には、長時間座り続けないようにすることが大切です。 時折立ち上がり、体を動かし、前立腺の血行が悪くならないようにしてください。

自転車のサドルは特に前立腺を圧迫してしまうので注意が必要です。 自転車の長時間使用にはくれぐれも気をつけると良いでしょう。

下腹部を暖かく保つのも有効です。シャワーだけの人は時々お風呂に入って下腹を温めるようにすると前立腺炎の予防に繋がります。

また、飲酒や過度のストレスも前立腺炎に繋がることがあるため、 避けられる時には避けるようにしましょう。

これらの予防法を使って出来る限りの対策を取っていても前立腺炎になる可能性は十分にあります。違和感があったら早めに泌尿器科で医師の診断を受けてください。

細菌性の場合には早期発見で悪化が防げますし、非細菌性でも早めに対策を取ることで治癒が早くなるはずです。

前立腺炎の症状についてご紹介しました。排尿時に痛みがあって不安に思っている方や、この病気に関する疑問が解消されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?

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