「ハチミツ」を1歳未満の子どもに食べさせてはいけないのはなぜ?
- 作成:2022/01/16
「ハチミツ」は食品として美味しいだけでなく、栄養も豊富で風邪をひいた時にもよく使われるものですが、1歳未満の子どもには食べさせてはいけません。 「乳児ボツリヌス症」という危険なトラブルを起こす恐れがあるからです。「加熱調理すれば大丈夫」「国産のものであれば安全」というわけでもない、という点に注意が必要です。
この記事の目安時間は3分です
「ハチミツ」と「乳児ボツリヌス症」
ボツリヌス菌は、土や水の中など身近に広く存在する細菌です。「ハチミツ」は、ミツバチが花から集めてきた蜜のことですが、花は土に植わっているので、ミツバチが蜜を集める際に、このボツリヌス菌が「ハチミツ」の中に混ざり混むことがあります。
通常、健康な大人であれば、このボツリヌス菌が体内に入り込んでも、体内に元から存在している細菌(常在菌)との競争に敗れてしまうため、ボツリヌス菌がお腹の中で増えることはありません。しかし、1歳未満の乳幼児ではまだこうした腸内環境が整っていないため、稀にボツリヌス菌がお腹の中に定着し、増殖してしまうことがあります。こうして増えたボツリヌス菌が毒素を出すことで発症するのが「乳児ボツリヌス症」です。
つまり、大人が食べても平気な「ハチミツ」であっても、1歳未満の乳幼児が食べると危険なことがある、ということです。そのため、腸内細菌がそれなりに整う1歳までは「ハチミツ」は食べさせないようにしてください1)。
なお、このリスクが確認されたのは1986年頃です。そのため、1986年以前に子育てをしていた世代はこのことを知らず、むしろ「栄養があるから」といって乳幼児にハチミツを食べさせてしまうことがあるかもしれません。自分の祖父母世代にも、しっかりと情報共有して知識をアップデートさせておきましょう。
加熱すればOK?国産のものであれば安全?
インターネットやSNSでは、「加熱すればOK」「国産のものであれば安全」「○○産、△△製のものは大丈夫」・・・といった情報が出回ることがあります。しかし、こうした情報はいずれも不正確なため、注意が必要です。
ボツリヌス菌には、「芽胞」と呼ばれる状態になって、熱などに耐える特殊な能力があります。この「芽胞」の状態のボツリヌス菌は、通常の調理や加熱では全く退治できません。つまり、「ハチミツ」を加熱調理すればOKというわけではないのです。加熱調理した「ハチミツ」であっても、焼き菓子などに入っているものであっても、1歳未満に与えるのは避けてください。
また、ボツリヌス菌は世界のどこにでも普遍的に存在している菌です。日本は公衆衛生が発達して清潔だから日本産のハチミツであれば安全、ということはありません。あるいは、海外の○○という風光明媚な土地で採取されたハチミツだから大丈夫、人の手が入っていない未開の大自然の中で採取されたハチミツだから大丈夫、信頼できる△△社が作ったものだから安心・・・ということも、ありません。そこに土が存在する限り、ボツリヌス菌は「ハチミツ」に混入する可能性があり、通常の加熱や処理ではそのボツリヌス菌を無害化することは不可能だからです。
「ハチミツ」は色々な場面で活躍する便利な食品
基本的に、腸内環境が整っていない1歳未満の乳幼児を除けば、「ハチミツ」は特にリスクの高い食品ではありません。むしろ、「ハチミツ」には糖分だけでなく様々なミネラルが含まれているため、昔から栄養豊富な食品として利用されてきていますので、上手に活用してもらえたらと思います。
たとえば、レモンとハチミツを混ぜた暖かい飲み物などは、風邪をひいた時などに良いおすすめの飲料です。特に、「ハチミツ」は咳止めの薬よりも風邪の咳症状を大きく和らげてくれるという報告もある2,3)ため、咳で夜に眠れないときなどには、寝る前にティースプーン1杯くらいのハチミツを摂るのも良い対策になります。また、「ハチミツ」は粘度や甘さが強く、薬の苦味や酸味をうまく隠してくれるため、苦手な薬や飲みづらい薬がある場合にも役立ちます。
子どもの風邪にはあまり薬を使いたくない、子どもが薬の風味を苦手にしていてなかなか薬を飲んでくれない・・・そんな時には、「ハチミツ」を選択肢の1つとして思い出してもらえたら幸いです。
1) 厚生労働省「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから」
2) Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 10;4:CD007094.
3) Arch Pediatr Adolesc Med . 2007 Dec;161(12):1140-6.
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