大人用柔軟剤で洗ったタオルを口に入れる赤ちゃん、体への影響は?
- 作成:2022/04/09
AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、大人用柔軟剤の赤ちゃんの発育への影響について心配するお母さんからのご相談です。
この記事の目安時間は3分です
【今回のお悩み】
生後6ヶ月の娘についで相談です。産まれてから娘の洗濯物は赤ちゃん用洗剤、大人やタオルなどはこれまで使っていた洗剤や柔軟剤を使用していました。
最近は動き回りよく吐くのでバスタオルをひき、その上におくるみをひいて寝かせてはいるのですが、布が大好きでタオルもがぶがぶ噛んでいます。
柔軟剤が赤ちゃんに良くないというのは聞いていたので大丈夫かなぁと漠然と思っていましたが、娘のものは分けているし、市販されているものだしとあまり気にしていませんでした。
ところが、ふと調べてみると、使っていた柔軟剤が医師のコラムの題材になっていました。
その先生のコラムによると、柔軟剤は一般の洗剤などと比較して刺激性・毒性がはるかに強く、政府が「人の健康を損なうか、動植物の生育に支障を及ぼすおそれがある物質」と判断して監視している物質の一つも入っていると書かれていました。また、香料成分の中には、「アレルギーや喘息の原因になる成分、ホルモン攪乱作用や発がん性のある成分などがある」とも書かれており、怖くなりました。
住宅事情から、娘が寝ている部屋に洗濯物を干しています。メーカーのホームページを見ると、「赤ちゃんにも使用できますが、香りが気になる場合は無香や微香のものを選んでください」とだけありました。
新生児期から香りを嗅いでいたと思います。すすぎもしっかりしているのですが、香りや洗剤成分がそこまで人体に影響するものなのでしょうか。もちろん100%安全というものはないとは思うのですが…毎日のことなので、これまでのことで娘に何か悪い影響があったらと思うと不安です。お医者様のご意見を伺いたいです。
医師の回答
赤ちゃんの五感(視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚)の発達は素晴らしいです。特に赤ちゃんの嗅覚はお母さんのお腹にいる時から発達し、妊娠20週頃には完成しています。生まれた時には嗅覚は十分成熟して生まれてきます。
対象者数は少ないですが、実はこんな研究もあります。出産直後に母親の片方の乳房を生理食塩水で洗い、もう片方の乳房はそのままにすると、赤ちゃんは洗っていない方の乳房を選ぶ傾向にあったと言うものです。
赤ちゃんがお母さんのお腹に置かれるとゆっくり自分からお母さんのおっぱいに吸い付く行為をBreast Crawlと言いますが、それほどに赤ちゃんの嗅覚は生まれた時点で発達していることを示しています。
最近、赤ちゃんに関する香りの害に関して質問を受けることが多いです。しかし現時点で、香りの害がどこまで赤ちゃんに影響を与えるか調べた研究はありません。つまりはっきりとした科学的根拠(エビデンス)が無いというのが現状といえます。
よく赤ちゃんにも香害(香りの害)があるのだと述べている方をお見受けしますが、問題視される臭いも人工的なものばかりで自然的なものにはあまり言及されていません。はっきりとしたエビデンスが無い以上は、現時点では気にしなくてよいと思います。
参考文献
- Varendi H, et al. Does the newborn baby find the nipple by smell? Lancet 1994; 344(8928): 989-90
- Varendi H, et al. Breast odour as the only maternal stimulus elicits crawling towards the odour source. Acta Paediatr 2001; 90(4): 325-7
- 佐藤和夫. 赤ちゃんの五感の発達(触覚、聴覚、視覚、味覚、嗅覚) with NEO 2020; 33(5): 51-60
小児科医/新生児科医
日本小児科学会専門医、日本周産期新生児専門医
一般社団法人チャイルドリテラシー協会所属。日本小児科学会健やか親子21委員。大阪大学公衆衛生学博士課程在籍。講談社モーニング連載『コウノドリ』の漫画・ドラマの取材協力。m3(エムスリー)、Askdoctors、yahoo外部執筆者として公衆衛生学の視点から周産期医療の現状について発信。
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