学校に子どもの情報を伝えるには、医療現場の「申し送りシート」が便利だった!
- 作成:2022/06/04
こんにちは。外科医ちっちです。 皆さん、学校の先生方にお子さんたちの情報はスムーズに伝わっていますか? もちろん説明されているとは思いますが、伝わっているのかな? と不安になることも多いかと思います。私も、子どもたちの日中の対応を先生方にお任せするにあたって、子どもを理解して欲しい、こうして欲しい、そう思うものの、なかなか伝わらないと長年悩んできました。 成長とともに支援施設や学校など、親以外と過ごす時間は増えていきます。子どもには調子の波があり、特に調子が悪い時は、「どんな状況か」「どう対応して欲しいか」を先生方に正確に端的に伝えたい場面も多くなっていきます。そこで今回は「医療現場の申し送り技術」を紹介します。と言うのも、違う分野の知識が、ある分野では新しく、使いやすさにビックリすることがあるからです。この伝えるしくみは、教育現場にも生かせます。
この記事の目安時間は3分です
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(画像素材:ピクスタ)
学校にもぜひ! 医療現場の「申し送り」の技術とは?
病院には色々な病気の方がいて、その経過も様々です。医師も看護師も、勤務時間は決まっていて、24時間同じ人が対応できる訳ではありません。退勤時に、患者さんに関しての情報、「どんな患者さんで、治療経過はどうなっていて、今後起きうることは何なのか?」を、次の担当者に伝えないといけません。
特に、重症の患者さんが多い集中治療室(ICU)では、「申し送り」が重要です。患者さんの状況がわからないと、夜や休日に急変しても適切な処置や治療が遅れるからです。命を扱う医療現場と言っても働くのは普通の人間です。そんな中、見落としを減らし、さらに必要な情報を全部伝えるにはどうしたらいいのか?
そこで必要になるのが、ミスが起こらない「システム」です。
要するに、『話し方・伝え方のテンプレート』を事前に決めておいて、それに沿って伝えるのです。何をどんな順番で話すかなどがバラバラだと、言う側も、聞く側も「何を伝えて、何を伝えていないか」がよくわからなくなって、正確に伝わりません。
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申し送りのやり方は様々ですが、中でも医療現場でミスを減らしたという報告もあるのが「I-PASS」です。アルファベットが並ぶと難しいもののようですが、要は「話す順番の頭文字」です。
Illness severity:重症度:3つの中から選択「不安定、要注意、安定」
Patient Summary:病歴要約。今までの経過を2〜3文で簡潔に
Action List:やってほしいこと。To do リスト
Situation awareness and Contingency planning:起きるかもしれないイベントとその対処法
Synthesis by Reviewer:申し送りを受けた人の復唱+質問タイム
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内容はそれだけ? と思うくらい簡単ですが、この順番でしっかり伝えると、確かに見落としが減ります。
【例えば、長男にっちの場合】
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I-PASSを使うと…↓
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わが家で実際に使っている申し送りシートが、こちら ↓
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【申し送り記入例】
本日の状態:パニックで【悪】
簡単な最近の経過:予定時間を5分過ぎるとパニックになる。
やってほしいこと:5分職員室にいさせてほしい。
注意することとその時の対処法:登校の緊張なので、見守るだけでOK。来てしまえば、時間をかけて落ち着くため大丈夫との予想。続いてしまった場合は、すぐに迎えに来ます。
申し送りを受けた人の復唱+質問タイム:5分職員室で見守る。
こうして、テンプレートに沿って情報を整理することで、話す方(保護者)・聞く方(先生)ともに、やり取りがスムーズになります。
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新年度に先生に渡したい「子どもの説明書」
NHKが良いテンプレートを発表しているのでご紹介します。
保護者や本人から、学校への「自分説明書」です。
新年度の担任の先生や、習い事などで初めて子どもがお世話になる人に渡すのは、こちらの説明書が良いと思います。
保護者の皆さんも本人も、書いているうちに「こういう特徴がある」と俯瞰することになり、より子どもへの理解が深まります。ベースになる子どもの情報が共有されたうえで、I-PASSの伝える仕組みを利用すると、よりお互いに状況や支援のあり方を共有できると思います。
情報共有シートを使って負担を軽減
私にとって、学校の先生との情報共有が、なかなかうまくいかないのが長年の悩みでした。
こうした申し送りシステムの一番の難点は、「伝える側、聞く側の双方がシステムに慣れないと使いにくい」ことです。聞く側が慣れていないと、途中で質問が入ってしまったり、どれをどの順番で言うかがわからず、記憶が飛んでしまったりします。
医療現場での情報共有システム、I-PASSが教育の現場で広く伝わり、子どもはもちろん、保護者や先生の負担が減ることを願っています。
外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟」
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる」
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti
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