「あ!」乳児が頭を打った時、親がすべき経過観察は
- 作成:2022/07/27
AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、乳児が家庭で頭を打った時の経過観察に関するご相談です。
この記事の目安時間は3分です
【今回のお悩み】
11ヶ月の息子が、大人用ベッドから転落し頭を打ちました。頭蓋骨骨折が心配です。
落ちてすぐに泣き、しばらく抱っこしてあげたら泣き止みました。今は寝ています。
身体の動きに左右差もなく、いつも通りに見えます。どういった点を経過観察すれば良いでしょうか。
医師の回答
転落して頭を打ったとのこと、大変心配ですよね。自分の娘も転落した時は心配しました。子どもの事故は毎年減少傾向ですが、未だ600名前後の子どもが事故で亡くなっています。
子供が転倒時に頭をよくぶつけるのは、身体に比べて頭が大きくバランスが悪いためです。打った後の対処法に関しては、いくつかチェックする症状がありますが、以下のような症状がある時はすぐに救急外来を受診しましょう。
- 意識が無い(名前を呼んでも受け答えがない時など)
- 頻回に嘔吐する、けいれんが見られる
- 出血が止まらない
- 打った所が明らかに凹んでいるなど
逆に、次のような症状であれば様子を見て良いと思われます。
- すぐに泣き出した
- 意識もしっかりあり嘔吐しない
- 普段通り遊び出しているなど
頭部外傷の際に特に多くの方が心配するのは「頭の中で出血がないかどうか」であり、子供は自覚症状がはっきりしない分CTに頼ってしまいたい気持ちも理解できますが、一方で、放射線被曝のリスクにより不要な頭部CTは可能な限り控えるべきとされています。そうした背景もあり、「実際にどういう時に、頭のCT検査を行うべきか」という提言が2019年に日本小児神経学会から出されています。
頭部外傷に適切な臨床診断を下すうえでための判断手法として、医療現場では、米国のPECARN、英国のCHALIE、カナダのCATCHというアルゴリズムが良く知られています。それぞれ対象とする条件が異なりますが、いずれも「頭部CT検査を行うべき」条件を明確に示しており、細かい基準は異なれど、意識レベル、意識消失の有無、受傷機転を元にCT推奨・不要を示している点は共通しています。しかし、あくまでこれらは推奨基準であって、完璧に頭部外傷を予測できるものではありません。やはり大切なのは、頭部外傷後は「新たな症状が出てこないか」「容態が変化しないか」を経過観察するのが望ましいという事です。
子供の事故は家庭内が多いです。まずは家の中の安全チェックを行い、家族全員で子供の事故を防いでいきましょう。
参考文献
#1 日本医学放射線学会. 画像診断ガイドライン 2016年版. 東京: 金原出版, 2016
#2. 日本小児神経学会. 小児頭部外傷時のCT撮像基準の提言・指針 2019(2022年6月25日最終閲覧)
小児科医/新生児科医
日本小児科学会専門医、日本周産期新生児専門医
一般社団法人チャイルドリテラシー協会所属。日本小児科学会健やか親子21委員。大阪大学公衆衛生学博士課程在籍。講談社モーニング連載『コウノドリ』の漫画・ドラマの取材協力。m3(エムスリー)、Askdoctors、yahoo外部執筆者として公衆衛生学の視点から周産期医療の現状について発信。
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