「なぜ診断名をハッキリ言わないのか」…児童精神科の謎すぎる告知

  • 作成:2023/02/08

こんにちは。外科医ちっちです。うちの次男さんちは、年少3歳児の時に不登園&強いこだわりが見られたため、児童精神科を受診しました。初診まで2か月待ちました。ようやく迎えたその日は症状のピークが過ぎていて、回復傾向でした。その時点で「自閉の傾向がある」とは言われたものの、生活での困り事が減っている状況であれば「診断は保留しましょう」と児童精神科の先生は言いました。

外科医ちっち 監修
 
外科医ちっち 先生

この記事の目安時間は3分です

1年生の秋、「自閉症スペクトラム症」と診断

児童精神科を受診した後、幼稚園には2日行って1日休む、1日行って4日休むといった本人のペースで通い、卒園しました。休む比率は成長に伴い、徐々にですが減っていました。

うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟−「なぜ診断名をハッキリ言わないのか」…児童精神科の謎すぎる告知

そうして、さんちは小学1年生、7歳になりました。小学校で初めての夏休みが明けてから、学校に行けなくなりました。そして、初診予約と同じく2か月待って児童精神科に行き、11月に「自閉スペクトラム症」という診断をいただきました。

「まるで呪文」小声&早口の告知

こうして、うちの3人の子どもたちは、みな自閉スペクトラム症と診断されたわけですが、毎回不思議な告知を受けました。

1回目、長女いっちの場合

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児童精神科の先生は、紙カルテに書かれている「自閉スペクトラム症」という文字の辺りをトントントンとしながら「いっちさんは、これです」と病名を告知されました。

席が少し遠かったこともあり、聞き取れなかっただけなのかな? 結局、自閉スペクトラム症と診断されたのかな? と3日ほど悩みました。後日、病院に電話をして「ごめんなさい。先日は聞き取れなかったのですが、自閉スペクトラム症でいいのですよね?」と聞いてみました。電話での口頭だからか「はい、自閉スペクトラム症です」とハッキリおっしゃってくれました。

なぜ診察室では、トントントンとペンで示されたのでしょうか。妻と2人で数日間ずっと首をかしげていました。

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2回目、長男にっちの場合

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以上です。

3回目、次男さんちの場合

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こしょこしょっと早口の小声で「自閉スペクトラム症です」と言われました。まるで呪文です。

私は外科と救急に携わる医師ですが、患者さんには病名を正しく伝えることを心掛けています。そこから話が始まるので、紙に書きつつ説明する際の一番上には病名を書いています。

児童精神科では、隠れるように診断名を伝える、その理由は何でしょうか?

ハッキリ告知しない理由を考えてみた

児童精神科の先生方が、「自閉スペクトラム症です」とハッキリ言わない理由を考えてみました。

事実① たいてい診察室に子ども(患者)もいる

患者は子どもなので、診察や検査は子どもが受けますが、説明は主に保護者が受け答えます。

事実② 子どもへの告知のタイミングや方法は、保護者に任されている

18歳以下の未成年ですので、保護者の意向が今後の治療に反映されます。

いつ、どのように当事者である子どもに障害について説明するのかは、保護者が決めて実行します。それ故に、我々保護者は時期と方法と伝える内容についてとても悩みます。ですので、児童精神科医としては「子どもに伝えるのは今じゃない」と思っているのかもしれません。

状況③ (我々の予想)怒り出す保護者がいるから?

子どもが自閉スペクトラム症だと認めたくない保護者が怒り出すことがあるのかもしれません。

私の近所にもいくつかそういったご家庭があります。

父親が「子どもを障害者にしたくない」といって診断も支援も拒んでいます。

苦しいのは本人と身近で世話をする母親です。

「あなたの子どもは自閉スペクトラム症です」とハッキリ言えないのは、怒り出す保護者がいるのでオブラートに包んだ告知をするのかもしれません。

少しでも過ごしやすい環境を整えるために

長女いっちは、幼稚園時代から決められた予定に従って行動することが苦手で、予定が増えた小学校入学後に周囲に合わせることが出来ず、診断を受けました。

長男にっちは、不安が強めで新しいことや怖いことがあると、パニックになってしまうため、診断を受けました。

次男さんちは、同年代の子どもと長時間過ごすことが苦手で学校に通えなくなり、診断を受けました。

どの子も、幼児期までの定期健診では何も引っかかっていません。幼児期から気になる行動はあり、母親から保健師や医師に相談はしましたが、短時間では伝わらず「様子を見てください」という返答でした。

神経発達症(発達障害)や自閉スペクトラム症には、「○○の行動があったら・なかったら→△△」というわかりやすい診断基準はなく、3人とも違う人格・能力です。できること、できないことも3人とも違います。

診断を受けることで「変わった扱い」を受けることはあり、今回の記事のように児童精神科医からも親として不思議に思う扱いをされました。

ただ、診断がない限り、学校側との交渉で全く動いてくれないことも事実です。なので、少しでも過ごしやすい環境を整える手伝いとして、3人とも診断を受けています。

外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti

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