うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟――アンガーコントロールよりも大切なこと「感情に正しく名前をつける」
- 作成:2023/07/12
こんにちは。外科医ちっちです。うちの3人の子どもは、全員が自閉スペクトラム症の診断を受けており、いくつかの困りごとを抱えています。一緒に生活するうえで、「こんな発想でこんなことをしてしまうのか」と驚かされることもあれば、「こうとしか考えられないのか」と辛い思いをすることもあります。この連載では、「変わった行動をしてしまう」親子が快適に過ごそうと試行錯誤する中で考えたことを書いています。
この記事の目安時間は3分です
感情に正しい「名前」をつける
子どもに限らず大人でもいるけれど、その時に表現している感情と本人の気持ちがずれている人がいます。
1番多いのは緊張していたり、人に自分の話を聞いてほしかったりする時に怒り出すこと。我が子3人の中だと長男がそうなりやすいので、その都度、言葉に出して修正をしています。
「緊張や不安を感じていてそれを他人に知ってほしい時は、怒るのではなく『緊張や不安を感じている』と素直に口に出したらいい」
「どんな時も、親は絶対にあなたの言い分を聞く時間を作る」
「何かを他人に求めるなら、イライラした様子で圧力をかけるのではなく、まずは率直にしてほしい内容を伝えるのがいい」
実感を伴う理解はまだ出来ていないようだけど、それでもずっと伝えている。
実際に、成長に伴って、「本人もよく分からない分類不能の怒り」は少しずつ減ってきている。
子ども達に伝えていること~感情を人にぶつけて解消しない
「緊張や不安」を「怒り」の箱に入れるのは違う。
自分の感情は、自分で解像度を上げないと他人には分からない。
だから、自分で掘り下げないといけない。
自分の状況を見つめ直す意味でも、感情を周囲の人にぶつけて解消する癖をつけないためにも。
大人でも出来ていない人は沢山いるけれど、そういう人たちはどうしても生きていく難易度が上がる。一緒の空間で過ごす人にストレスを与えてしまうから。
「怒りを6秒待つ」より「本当に自分は怒っているのか」
アンガーコントロールが苦手な人は、割と自分が何故怒っているのかをきちんと答えられないことが多いです。
『感情の名前付け』に慣れておらず、自分の中にあるモヤモヤのきっかけが何で、どんな感情なのかが分からず、認識や処理が出来ない怖さが怒りとして出ています。
だから、第一歩は「怒りを感じたら6秒待つ」などの対策ではなく、「そもそも自分は怒っているのかどうか? 感じている感情は怒りなのか?」を認識させること。
特に幼い時期は、「明日のお出かけが楽しみ」みたいな良い感情でも、本人は怒ってしまうことがありました。
「自分では把握出来ないのに心が普段と違う=落ち着いていない」ことが怖いのだと思います。
感情には色んな種類があるし、名前がある。場合によっては、1つの名前ではなく、色々な感情が共存することもあります。それぞれの感情を感じ・認めた上で、きちんと対応することが落ち着くための近道だということを子どもたちに知ってほしくて、まずは一緒に名前付けを出来るようになるのが目標です。
「感情」は、簡単に「思考」を塗りつぶします。そんな感情を乗りこなすコツは、名前をつけてしまうことだと思っています。名前がつくと、大きく感じていたはずの感情がそれほど大きくないことに気付けますし、何故自分がそういう気持ちなのかの理解も進みます。
同時に大事なのが、「負の感情を持つこと」自体は悪くはないこと。不安や緊張だけでなく、嫉妬や羞恥、罪悪感も、まずは適切に名付けて分析することから、状況を良くする具体的な行動を考え始めることが出来ます。
そんな考えが、子どもにも伝わってほしいと思って、普段から接しています。
外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟」
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる」
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti
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