子宮外妊娠の手術、薬による治療と入院期間 抗がん剤も?

  • 作成:2015/11/30

子宮外妊娠で手術をする場合、ほとんどが卵管部分に着床していることから、卵管を摘出する方法となります。ただ、薬物を使う場合や流産を待つ場合もあります。今後妊娠を望むかどうかなどを総合的に考えた上で、医師と相談して対応を決める必要があります。入院期間や、治療で使う抗がん剤の意味合いを含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤 恒正 監修
落合病院 副院長
近藤 恒正 先生

この記事の目安時間は3分です

カップル

子宮外妊娠は全体の1%

卵巣から排卵された卵子が卵管に取り込まれて、そこで精子に出会うと受精が起こります。受精卵は卵管を通りながら子宮へ移動します。その後、子宮内膜で着床し発育を続けます。これが通常の妊娠です。

一方、「子宮外妊娠(正しくは、異所性妊娠)」では、子宮以外の場所に受精卵が着床してしまいます。子宮外妊娠が起こる確率は妊娠全体の約1~2%で、卵管、卵巣、腹腔あるいは子宮頸管に着床します。中でも、卵管に着床するケースが約98%で最も多くなっています。

なぜ、卵管妊娠では受精卵が卵管をスムーズに通過することができなくなり、卵管内にとどまってしまうのでしょうか。その原因としては卵管の受精卵輸送障害(受精卵を運ぶ機能の障害)と考えられています。卵管炎や子宮内膜症などによって、卵管が狭くなったり、卵管の周囲に癒着が起こることで、輸送に障害が生じると考えられています。

卵管に着床するタイミングは、受精の約2、3週後といわれています。生理が遅れていて妊娠しているのかもしれないという時期にあたりますので、急に下腹部の痛みがあって婦人科を受診した際に子宮外妊娠が発見されるケースもあります。

しかし、痛みや出血などの症状が出ることで判明する以外は、「生理が止まって、妊娠反応が出ているのに、子宮内に受精卵の着床が見られない」という場合に、子宮外妊娠ではないかと疑って診断をしなければなりません。

処置は手術が基本 卵管摘出も

子宮外妊娠と診断された場合、早く発見されたかどうかで処置は異なります。ただ、手術が一般的で、卵管を摘出することとなります。

損傷を受けている卵管を切除せずに、卵管機能を残す場合でも、術後再び同じような子宮外妊娠を起こす可能性が高いです。また、摘出しない方の卵管が正常に機能している場合は妊娠可能であり、卵管を残した場合と比べて妊娠しやすさに差がありません。したがって、一般に子宮外妊娠の治療では、卵管の摘出が実施されています。腹腔鏡を用いるケースもあります。

卵管線状切開は卵管に切り開いて、内容を除去する方法です。その場合には卵管を残すことができますが、「外妊存続症(がいにんそんぞくしょう)」といって、まれに絨毛組織が残ってしまうことが起ことがあります。はじめは無症状ですが、残った組織の増殖破裂により腹腔内で出血が起こり下腹部の痛みが伴います。そういった場合には「メソトレキセート(MTX)」という抗がん剤の一種を投与して治療することがあります(後述)。

入院は3日から10日程度

お腹の中で大量に出血していることが考えられる場合には緊急手術になり、開腹手術によって卵管を摘出する場合がほとんどです。7日から10日間ほどの入院が必要になります。卵管破裂がない場合は、腹腔鏡による卵管切除あるいは卵管線状切開が実施されます。どちらも約3日から5日間の入院が必要になります。

なお、腹腔鏡による卵管切除あるいは、卵管線状切開でも、約3日から5日間の入院が必要になります。

抗がん剤を用いるケースも

手術以外の治療法には、薬物療法と待機療法があります。

薬物治療とは、「メソトレキセート(MTX)」という抗がん剤の一種を投与し、妊娠組織(絨毛)を消滅させる方法です。卵管摘出後あるいは卵管温存後に妊娠組織を消滅させることを目的として投与されます。手術を希望しない方が選択することもありますが、日本では健康保険適用外であり、現時点では、あまり普及していない療法です。

待機療法とは、子宮外妊娠した妊娠組織(受精卵)が流産するのを自然に待つ方法です。この場合は、hCG値の推移(流産すると数値が下がってきます)を頻繁に検査し、経過を観察してゆきます。薬物療法のような身体負担はありませんが、ただ流産を待つというスタイルですので、経過途中に卵管が破裂してしまうこともあります。卵管破裂は緊急手術が必要となりますので、経過観察には十分な注意が必要となります。また、外妊存続症(妊娠組織が残ってしまう症状)が起こった場合には、メソトレキセート(MTX)による治療が必要になることもあります。

子宮外妊娠ついて手術の概要などをご紹介しました。もしかして子宮外妊娠かもしれないと不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?

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