子宮筋腫になると妊娠できない?治療、手術で改善する?
- 作成:2016/02/01
子宮筋腫には、大別すると薬物と手術による治療があります。病気そのものに加え、治療では、子宮や女性ホルモンへの影響があるため、妊娠に大きく影響します。どのような影響があり、治療で改善するのかを、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
月経時出血増が1つのサイン
子宮筋腫とは、子宮にできた良性のこぶのことです。子宮筋腫は、筋腫の大きさや数、できた場所などによって症状の個人差が大きく、人によってはまったく自覚症状がない人もいます。
しかし、子宮筋腫ができると月経時の出血が多くなったり、出血の期間が長くなったり、貧血になってしまう人もいます。また月経と月経の間の不正出血や、性交後の出血が確認されることがあります。子宮筋腫が大きくなると、月経痛が激しくなり、月経中以外も骨盤部に痛み、圧迫感、重苦しさなどを感じることがあります。筋腫が子宮の内部や外部を圧迫するため、下腹部に痛みや圧迫感を感じることもあります。筋腫がさらに大きくなると、膀胱を尿道を圧迫し、便秘、頻尿、排尿障害を引き起こすこともあります。
また、子宮筋腫によって卵管が塞がれたり、子宮が変形してしまったりすると、不妊、流産、早産などの原因となることもわかっています。このため、月経痛や大量の出血などの自覚症状がなくても、不妊、流産、早産などがある場合は、婦人科で検査を行い、子宮筋腫と診断された場合は早めに治療を行うことが大切です。
複数種類ある手術治療
子宮筋腫の治療は、薬物療法と手術の2種類に分けられます。薬物療法では、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)またはピルと呼ばれる飲む避妊薬を使って女性ホルモンの働きを抑えて筋腫を小さくします。
手術は、子宮全体を取り除く「子宮摘出術」と、筋腫だけを取り除き子宮を残す「筋腫摘出術」があります、手術の方法は、従来からある開腹手術以外に、おなかにカメラや器具を入れる穴を数個開けて手術を行う腹腔鏡下手術や膣からカメラや器具を入れて手術を行う子宮鏡下手術があります。
この他に子宮動脈に栓をして子宮筋腫への血液の流れを遮り筋腫を小さくする子宮動脈塞栓術や超音波で筋腫細胞を死滅させる集束超音波治療など、多くの方法があります。
手術後、子宮が破裂する危険性も
薬物療法の場合は、女性ホルモンの分泌を抑えるため、一時的に排卵だけでなく、月経自体が止まることもあります。そのため、治療後に妊娠を希望する場合は、薬物療法が終わり、再び排卵があることが必要となります。薬物療法が終わってから妊娠を希望するときは、医師に妊娠のタイミングについて相談することが大切です。
手術の場合、子宮摘出術を行った後は妊娠ができなくなります。これに対して筋腫のみ取り除く筋腫摘出術の場合は、手術による傷が回復して、子宮が着床できる状態になれば妊娠が可能です。ただし、筋腫摘出術の後に妊娠すると、妊娠中に子宮が破裂する危険性がまれにあります。そのため、筋腫摘出術の後に出産するときは帝王切開を行う事が多いです。また、筋腫摘出術を行った後に筋腫が再び増えたり大きくなることがあるため、人によっては筋腫摘出術の後に、子宮摘出術が必要になるこケースもあります。
なお、子宮動脈塞栓術や集束超音波治療は、治療後に妊娠できた方も多く出てきていますが、妊娠への影響がある可能性があるため、妊娠を希望する人への治療は十分な検討が必要です。
妊娠希望か否かで変わる対応
薬物療法は、通院のみで治療できる一方、薬による副作用や、治療後に筋腫が大きくなってしまうなどのデメリットがあるため、主に筋腫を小さくして手術をしやすくするときや閉経が近く今後妊娠を希望しないときなど行われます。
手術の場合、子宮摘出術を行った後は再発の可能性がなくなりますが、妊娠ができなくなるため、子宮摘出術を行う場合は、妊娠を希望しない方が対象になります。子宮を残す筋腫核出術は、手術後の傷が回復し、着床が可能であれば妊娠、出産が可能です。そのため、妊娠を希望し、かつ筋腫が不妊や流産の原因であるときは筋腫核出術を行います。
手術の方法として、開腹手術は筋腫が大きいときや癒着があるときも取り除くことができますが、手術後の回復に時間がかかります。腹腔鏡下手術や膣から子宮内腔にある子宮筋腫を核出する「子宮鏡下手術」、膣から子宮摘出を行う「腟式子宮全摘術」は、おなかに傷が残りにくく比較的回復が早いですが、筋腫の大きさや数によっては開腹手術でないと対応できないことがあります。
また、腹腔鏡で子宮周囲の処理を行い、膣から子宮を摘出する、「腹腔鏡補助下腟式子宮全摘術」と呼ばれる方法は負担の少ない手術で、行っている施設も増えつつあります。
増加傾向にある子宮筋腫の妊娠への影響をご紹介しました。もしかして子宮筋腫かもしれないと不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?
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