自然流産の定義、原因、検査、治療 兆候症状あり?予防できる?染色体異常以外でも起きる?
- 作成:2016/10/14
自然流産は、多くの場合「染色体異常」と呼ばれる異常が原因でおこります。母体の異常や繰り返すケース確率は高くありません。兆候症状の有無や、治療の必要性を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
自然流産の定義
「自然流産」とは、妊娠22週未満における、人工的でないの胎芽や胎児の死亡、または妊娠による子宮内の産物の排出の事です。その時期によって、妊娠12週目未満で起こる「初期流産」と、妊娠12週目以降の「後期流産」に区分されています。自然流産では、胎児として生存する前の段階「胎芽(たいが)」も認められない、あるいは「胎芽」が認められても生存していない状態のため、正常な妊娠を継続することが不可能な状態です。
自然流産の原因 染色体異常
自然流産の原因の約65%から70%が「受精卵の染色体の異常」です。正常な胎芽へ成長することができないため、妊娠継続が不可能な状態になっています。
ヒトの遺伝子(DNA)は、約22,000個存在しています。この遺伝子が何重にも、らせん状になっているのが「染色体」です。
ヒトの染色体は、46個存在しています。この染色体の数、そして形が変わってしまうことを、「染色体の異常」といいます。
受精卵の染色体の異常では、「トリソミー」といって、染色体が1個多くなるケースが多くみられており、自然流産の原因の約50%以上がトリソミーです。特に母体が40歳以上の場合、自然流産の原因の約80%以上がトリソミーとする結果が出ています。受精卵の染色体の異常がみつかると、高い確率で流産を引き起こしてしまいます。
母体の年齢が高いほうが染色体の異常が起こりやすいことは、科学的に確認されており、年齢別でみると、20代で約10%から20%、30代で約20%から30%、40代で約40%以上の確率で、自然流産がおこっています
染色体異常以外の自然流産の原因
そのほかの原因としては、妊娠前期の卵巣ホルモン分泌不良や、母体の内分泌異常、子宮の奇形、様々な感染症、血栓性疾患など多様です。
黄体ホルモンなどの妊娠継続に必要なホルモンは、卵巣から分泌されています。妊娠初期に必要なホルモンの機能が悪いと、流産になる事があります。
また、母体の内分泌異常で流産を引き起こす事があります。例えば、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症では流産が多い傾向があります。また、インスリンの異常である糖尿病の方も、流産が多いです。
子宮の奇形は、子宮そのものの形態異常、例えば、双角子宮などで流産が多くなります。また、子宮筋腫による影響も大きい事があります。子宮筋腫が大きくなった事による子宮の変形がおこると、流産につながる事があります。また、子宮筋腫そのものが、着床や受精卵の成長に影響を及ぼし、流産になる事もあります。
特定のウイルス(特にサイトメガロウイルス,ヘルペスウイルス,パルボウイルス,および風疹ウイルス)などの感染が起こると、流産の原因になる事もあります。これらのウイルスは、流産の原因とならなくても、胎児の成長に影響を及ぼし、出生後に障害を引き起こす可能性があります。
自己免疫疾患などによる血栓性疾患によって、血栓の生成が起こると、胎盤の機能不全が起こりやすくなり、流産の可能性が出てきます。
以上のような要因のある方は、「不育症」「習慣流産」を起こす可能性が高くなります。不育症および習慣流産は、流産を繰り返してしまい、妊娠を継続できない状態です。2回続けて、流産する確率は妊婦の約2%から4%、3回以上続けて流産する確率は妊婦の約0.3%から0.8%となっています。
自然流産に兆候症状はある?
一般的な流産の兆候としてあげられているのが、少量の出血と下腹部の痛みです。しかし、自然流産で、特に早期段階であるほど、出血や下腹部痛といった自覚症状がほとんどなく、妊婦健診ではじめて気づく場合が多くあります。一部は「稽留流産」といい、心拍が確認されない胎児が、子宮の中にとどまっている状態のまま流産となります。ただ、自覚症状はまったくありません。「稽留流産」は、平均的に、妊娠6週目から10週目に見つかります。
放置しておくと、多くは、胎児や組織などが子宮内にとどまっているが出血が起きている「進行流産」へと進みます。進行流産は、しだいに胎児や組織などが出血とともに排出され、組織の一部が子宮内に残る場合「不完全流産」、完全に排出されてしまった「完全流産」へと、進んでいきます。
また、出血と下腹部痛以外の兆候として、基礎体温上昇、つわりが急になくなる、といった状態が表れる方もいます。
妊娠初期段階は、母体も胎児もまだ不安定です。もし気になる症状が出た場合は、すぐにかかりつけの産婦人科を受診して検査を受けてください。
自然流産の検査・診断
胎芽が生存しているのか、成長しているのかは、超音波検査で判明しますので、妊婦健診がいかに大切か理解できます。
おおむね妊娠6週目以降、通常妊娠であれば胎児の心拍が確認されますが、胎児心拍が確認されない場合、「流産」と診断されます。また、妊娠6週目未満の場合では、通常、妊娠4週目ごろになると確認できる「胎嚢」という赤ちゃんを包む袋のようなものの成長が止まっていることが確認できた場合にも、「流産」と診断されます。いずれにせよ、ほとんどが超音波検査による診断となりますが、一度の検査だけでは判断は難しく、数回の検査が必要です。
自然流産は治療が必要?どのようなもの?
自然流産の治療は、種類により異なりますので、以下にご説明いたします。
「稽留流産」:放置しておくと進行流産になる事が多いのですが、進行しない場合があります。この場合には、子宮内除去術といって、子宮内の胎児と組織を取り出す手術が必要になります。手術時間は10分程度です。ただし、胎嚢が見えない、胎嚢が1センチから2センチ程度である場合は、「完全流産」(後述)となるケースが多く、完全流産の場合は、治療が不要になります。
「完全流産」: 胎児と組織が自然に子宮からはがれ、それらが全て出血となって子宮外へ排出されてしまう流産です。強い下腹部の痛みや出血を伴いますが、完全流産では、子宮内になにも残らないため、通常は治療が必要とされません。
「不完全流産」: 強い痛みと弱い痛みが繰り返される傾向があり、出血を伴います。胎児と組織の一部が子宮の中に残されるため、取り除く手術が必要になります。手術は稽留流産と同様です。
自然流産にならないためにできること
妊娠5週目から6週目未満では、まだ胎嚢や胎芽の状態で、胎児の心拍が確認できません。また、妊娠に気づいていない方もおられます。妊娠初期の超音波検査は大変重要だということが理解できます。
自然流産の原因の多くが受精卵の染色体の異常によるものですが、母体側の要因で流産になる可能性もあります。胎児が初期段階において無事に成長できるように、日ごろからタバコなどは避け、バランスの良い栄養を摂り、そしてストレスをなくすことが大切です。
また、流産後は通常1カ月から2カ月で生理が再開し、もとの状態へ回復しますので、再び妊娠する可能性があります。
自然流産は「不育症」や「習慣流産」など、繰り返すような原因がある確率は低いです。一度自然流産したからとあまり心配せずに、配偶者と相談しながら、前向きに妊娠できるように準備しましょう。
自然流産についてご紹介しました。妊娠について、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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