(慢性)膿皮症の原因、症状、治療、予防 放置するとがん化する?

  • 作成:2016/09/19

(慢性)膿皮症とは、皮膚への菌の感染によって起こる病気です。膿がたまるぶつぶつができて、跡が残ることがあるほか、放置すると癌になる可能性もあります。原因や治療も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は3分です

慢性膿皮症の原因とは?犬からうつることがある?

「慢性膿皮症(まんせいのうひしょう)」は何らかの原因で毛穴がふさがり、そこに菌の感染と皮膚の炎症が慢性的に継続するという病気です。皮膚からは毛が生えていますが、毛を取り囲むようにあるのが「毛包」と呼ばれる部位です。慢性膿皮症では皮膚の角質により毛包が塞がれてしまって、そこに菌の感染が併発し、慢性的な炎症が起こります。原因となる菌は「ブドウ球菌」や「連鎖球菌」などですが、この病気は単なる感染症ではなく、その発症には体質的な要因が大きく関与しています。「慢性膿皮症」とはいくつかの病気の総称で、「頭部乳頭状皮膚炎」、「禿髪性毛包炎」、「臀部慢性膿皮症」や「化膿性汗腺炎」などが含まれています。

「慢性膿皮症」では化膿が何度も再発を繰り返して、慢性的に皮膚に炎症が起こります。単に皮膚に細菌が入るだけでできるわけではなく、毛穴が詰まりやすい体質と炎症が継続してしまうという素因が関与しているため、抗生物質などによって一時的によくなるものの、再び症状が表れ、なかなか治りにくいのが特徴です。

犬でも皮膚が化膿する膿皮症は頻繁にみられます。犬の場合も、ヒトと同様に化膿の原因は「ブドウ球菌」などがですが、ヒトの慢性膿皮症は、皮膚に細菌が入ってできただけの単純な疾患ではありませんから、特に他の人やペットからうつるということは考える必要はありません。

遺伝の可能性も

優性遺伝で家族性に発症する(同じ家族の人が発症しやすい)タイプの難治性の膿皮症があり、「家族性慢性膿皮症」と呼ばれていますが、2010年になってこの家族性慢性膿皮症の原因は「ガンマセクレターゼ」という遺伝子の変異であることが明らかになりました。家族性慢性膿皮症は膿皮症の一部に過ぎませんが、マウスを使った実験から、ガンマセクレターゼ遺伝子が働かなくなると、毛穴が塞ぎやすくなることが判明しました。他のタイプの慢性膿皮症でも毛穴が塞がることが病気の発症に関与していることは共通していますから、今後は他のタイプの慢性膿皮症の原因研究も進むものと思われます。

慢性膿皮症の症状はどんなもの?顔にでる?他の体の部位には?

膿皮症になりやすいのは頭や首筋、わき、お尻などです。

成人の男性に多いのが「臀部慢性膿皮症」です。腰やお尻、外陰部から股にかけて、痛みを伴うしこりや膿ができ、膿がつぶれると悪臭を発します。そこには多数の傷跡も混在してきます。

「頭部慢性膿皮症」も成人男性に多く見られます。その一つである「頭部乳頭状皮膚炎」では、毛包が次々と化膿して、皮膚に慢性の炎症を起こし、その結果傷跡に「ケロイド」とよばれる硬く隆起した皮膚のしこりができます。また「禿髪性(とくはつせい)毛包炎」では毛包が化膿して炎症を起こすという過程が繰り返し、そのためにやがて皮膚が傷跡となり毛包が消失して、つやのある脱毛部位があらわれ、永久脱毛の状態となります。

慢性膿皮症の炎症を繰り返すと、症状が表れた部分に傷跡が残るようになり、人目にもつきやすいことから患者さんの精神的負担も大きくなります。

慢性膿皮症の治療 がんの可能性があれば手術も

化膿が目立つ時には抗生物質の服用、塗り薬による治療をするのが一般的です。さらに慢性膿皮症は再発を繰り返すので「瘢痕(はんこん)」という傷跡が生じてきます。化膿から瘢痕となるという過程が、長年継続すると「有棘細胞癌」とよばれるがんを発症することがあります。有棘細胞癌を放置すれば命にも関わるため、外科的手術により周りの組織とともに切除を行います。有棘細胞癌は、表皮の細胞から発生するがんで、日本人に多い皮膚がんのひとつです。男性のほうにやや多く、また加齢とともに発症しやすくなります。

慢性膿皮症の薬 漢方薬もある?

慢性膿皮症の治療には抗生物質の内服薬や塗り薬を用いるのが一般的ですが、連続して使用すると薬の効かない耐性菌が発生します。一方では自己判断で抗生物質を時々休んでしまうとかえって耐性菌を作ってしまうこともあります。このような事情ですから抗生物質の効き目がない場合や、比較的症状が軽い時には漢方薬による治療を行う場合があります。また慢性膿皮症では傷跡が隆起してくるとかゆみがあり、そこを掻いてしまうとその傷に細菌が入ってまた化膿するということを繰り返します。このため、隆起した傷跡の部分にはステロイド剤の塗り薬による治療を行いますが、ステロイドは化膿した部位に塗ると悪化しますから、化膿した部分を避けて傷跡にだけ塗る必要があります。

慢性膿皮症の予防

家族性慢性膿皮症では同じ遺伝子変異を持ちながら、発症する人としない人が見つかっています。これは遺伝的要因の他にも、肥満や喫煙などによって、発症が促されるためだと考えられます。また毛包が塞がれると細菌が感染しやすくなるので、体や頭皮を清潔に保つことが予防につながります。

皮膚を傷つけると化膿しやすくなるのは当然のことです。夏季に風呂に湿ったままで置いてあるタオルやスポンジには細菌が多数付着しています。それで皮膚を強くこすると細菌感染の危険性が増大します。また頭皮を強くブラシングすることも化膿の元になりますので、注意してください。

(慢性)膿皮症についてご紹介しました。皮膚の異変に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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