金属アレルギーになりやすい、なりにくい、ならない金属とは?

  • 作成:2016/10/07

金属アレルギーは、文字通り金属でおきます。とはいえ、金属アレルギーにならない金属もあります。なりやすい金属、なりにくい金属を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

目次

金属アレルギーになりやすい素材

金属アレルギーを引き起こす可能性が非常に高く、注意が必要な素材を紹介します。


◆ニッケル

ニッケルは非常にアレルギーを引き起こしやすい金属です。アレルギー性接触皮膚炎の原因で最も多いのはニッケルだと言われています。ニッケルは貴金属の合金やメッキ素材に長く使われてきた歴史があり、女性のアレルギー性接触皮膚炎の原因の第一位とも言われています。

ニッケルは汗で溶けてイオン化しやすいのが特徴です。金属がイオン化すると体内で吸収される割合が高くなり、少量でもアレルギー反応を起こすことがあります。

ニッケルが使われているのは、ピアス・イヤリング・時計・指輪・ブレスレットなどのアクセサリー類です。比較的安価なアクセサリーに使用されることが多く、メッキ製品にはニッケルがふくまれているものと考えた方が良いでしょう。一見すると金製品に見えるアクセサリーでも、金メッキの場合、メッキが剥がれるとニッケルが流出しやすくなるので注意が必要です。


◆コバルト

コバルトは、ニッケルに次いで金属アレルギーになりやすい素材です。コバルトは金やシルバーの加工や着色に使われるので、アクセサリーにもよく含まれていますが、ニッケル同様汗に溶けやすい特徴があります。また、歯科治療の素材としても使われることがあります。コバルトはアレルギーのもととなりやすい一方で、ビタミンB12に含まれており、生きていくのに必須の元素です。


◆クロム

クロムは非常にさびにくい金属で、家庭用品のメッキに使用されます。また、時計の皮バンド・革手袋・革バック・革靴などの皮製品の製造過程でも利用されています。金属ではないものを身につけたのに、金属アレルギーの症状が出た場合は、革製品も念頭に原因を探してみる必要があると言えます。


◆水銀

水銀は金属アレルギーを起こしやすい物質です。しかし、2016年現在、身の回りに水銀を使ったモノはあまり見られません。代表的なものは歯科治療で使われる「銀アマルガム合金」で、材料として水銀が使われていましたが、毒性があるということで現在ほとんどの歯科では使用されなくなっています。

比較的金属アレルギーになりにくい素材

まったくないわけではありませんが、比較的金属アレルギーになりにくい素材を紹介します。


◆真鍮(しんちゅう)

真鍮は銅と亜鉛の合金です。銅と亜鉛は金属アレルギーの発症順位はそれほど高くありませんが、まったくないわけではありません。適度な強度があり加工しやすいことから、アクセサリーだけでなく家具の金具や金属模型などに使われています。5円玉の素材であることでも有名です。価格もそれほど高くないことからアクセサリーとしても人気がありますが、汗や皮脂に溶ける性質があるので、身につける際は注意が必要です。


◆プラチナ

プラチナ自体は、金属アレルギーをおこしにくい素材ですが、一般的に流通しているプラチナ製品は、実際は「プラチナ900」という合金で、パラジウムが10%混ぜられたものです。「プラチナ900」に含まれるパラジウムは、アレルギーを引き起こすことのある物質で、プラチナだからと言って安心はできません。プラチナや金、シルバーといった金属は、「何が混ぜられているか」に注目する必要があります。


◆金

金は比較的安全だと考えられている素材ですが、金にアレルギー反応を起こす人もいます。通常は安定した物質である金も、直接皮膚に接触すると溶けだすことがあり、いったん体内に入るとかぶれやすい金属だとも言われています。

また、ご存じの方も多いと思いますが、多くの金製品は「金だけ」でできていることはありません。純金99.99%以上のものを24金(K24)といいますが、純金コインやインゴットに使用されるくらいです。宝飾品として一般的なのは18金(K18)です。18金は金に銀を12.5%、銅を12.5%混ぜたもので、銅は金よりもアレルギーの危険性が高い金属です。14金、10金と金の含有率が下がるほど混合物が増え、アレルギーを引き起こすリスクが高くなります。


◆シルバー

シルバーとは銀のことを指します。銀は比較的金属アレルギーを起こしにくい素材で、銀そのものにアレルギーを起こすことは非常にまれです。しかし、純銀は非常に柔らかく強度が保てないため、他の金属を混ぜた合金が使用されるのが一般的です。

シルバー製品には「SV950」「SV925」「SV900」と表記されています。数字が大きいほど銀の純度高く、小さいほど混ぜ物が多くなっています。SV950には5%、SV925には7.5%の混ぜ物が使用されています。混ぜ物として主に使用されるのは銅です。シルバー製品でかぶれや湿疹などの症状が見られた場合は、銅アレルギーである可能性もあります。

金属アレルギーにはならない素材

金属アレルギーの方でも使える可能性のある素材を紹介します。


◆ステンレス

ステンレスは金属アレルギーの原因になりにくい素材です。ステンレスは鉄にクロムやニッケルを混ぜた合金です。なぜ金属アレルギーになりやすいクロムやニッケルを含んでいるのに安全なのかと言うと、大気中の酸素に反応して「自己不動態化皮膜」という皮膜を作り、溶けにくいという性質を持つからです。ステンレスはサビや腐食、酸化、熱に強いことで有名な金属です。溶けにくいということはイオン化しにくく、体内に入りにくいのです。中でも「サージカルステンレス」という特殊なステンレスは硬度が高くアレルギー性が低いため、メスやハサミなどの医療用の器具にも使われています。「316L」と呼ばれることもあります。

非常に硬い金属なので、傷が付きにくく質感が長持ちすることが特長です。最近では加工技術の向上から、アクセサリーやジュエリーに使用されることも多くなってきています。


◆チタン

チタンは人体との相性が非常に良い素材です。軽い上に硬度が高く、腐食しにくい特徴があります。金や銀とは違い純度が高くても十分な硬度があり、比較的安価であるため、アクセサリーのほか、調理器具、メガネ、スポーツ用品など幅広く使用されています。金属や汗や体液でイオン化して溶けだすのですが、チタンは表面に「酸化膜」という薄い皮膜を作るため、溶けたり腐食したりすることがありません。


◆タンタル・ハフニウム・ニオブ・ジルコニウム

チタンやステンレス以外にも、金属アレルギーの心配が少ない金属は存在します。「タンタル」「ハフニウム」「ニオブ」「ジルコニウム」といった素材はあまり聞きなれた感じがしませんが、非常に強度があり、アレルギーにもなりにくいということで、結婚指輪に使われるようになって徐々に認知されつつあります。ただ、レアメタルにあたるため入手が安定せず、それほど多くは流通していません。深刻な金属アレルギーがあって結婚指輪をあきらめていた人など、特別な事情がある方にとっては、検討に値する金属といえるでしょう。



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金属アレルギーになりやすい金属などについてご紹介しました。「金属アレルギーかもしれない」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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