無痛分娩って実際どう?医師約800名の出産、理想と実態
- 作成:2021/02/03
エムスリーでは出産にまつわる意識調査を実施。790名の医師より回答を得ました。ここでは、出産方法、分娩施設について医師の実態と今後の希望をご紹介します。
この記事の目安時間は6分です
【調査概要】
出産はどうでしたか?
回答期間: 2020年11月26日 (木)~12月2日 (水)
回答済み人数: 1,377人(うち医師790人)
医師の出産方法は「自然分娩」が最多、「無痛分娩」の割合も高い
まずはお子様のいらっしゃる医師に複数選択可で伺った「これまでに経験された出産方法」についての集計結果をご紹介します。
男性医師(配偶者の出産方法)では自然分娩76.2%に対し、帝王切開が16.2%、無痛分娩が14.2%。
女性医師では自然分娩61.5%に対し、帝王切開が28.6%、無痛分娩が25.3%となりました。
参考までに、平成29年度に日本産婦人科医会が実施した「分娩に関する調査」の結果をご紹介すると、平成26-28年の全分娩に占める帝王切開の割合は19.4%、無痛分娩の割合は5.3%。
単純比較はできませんが、男性医師、女性医師ともに一般の方々よりも無痛分娩を選択する割合が高く、とくに女性医師でその傾向が顕著である傾向がありそうです。
またお子様のいらっしゃる女性医師の約3割が帝王切開を経験されており、その割合は男性医師のパートナー、また一般の方々よりも約10%高いということが分かりました。
さらに、将来的にお子様を持つことを考えている方に複数選択可で伺った「希望する出産方法」についての集計結果をご紹介します。
男性医師(配偶者の出産方法)では自然分娩43.9%に対し、無痛分娩が17.4%。女性医師では自然分娩31.3%に対し、無痛分娩が43.8%と、無痛分娩を希望される方が多数派であることが分かりました。
無痛分娩については、硬膜外麻酔を使用して痛みを緩和することで分娩時の体力の消耗を抑えたり、ストレスを緩和したり、緊急時には迅速に帝王切開に切り替えられるなどのメリットがあり欧米では一般的な出産方法であると言われています。
一方、日本国内ではそもそも無痛分娩に対応できる施設が少なく、人員不足のなかで無痛分娩を実施することに対するリスクに警鐘を鳴らす声も聞こえてきます。
男性医師(配偶者の出産方法)と女性医師の、無痛分娩希望の割合を見ると、両者には約2.5倍の開きがあります。つまり同様の知識を持った医師であっても、出産の当事者であるか否かで大きな差が開くということ。
無痛分娩に対するリスクには気を配りながらも、出産当事者の思いに寄り添い、夫婦で納得のいく選択ができるといいですね。
分娩施設は「母子周産期医療センター」が実態・希望ともに最多に
続いてはお子様のいらっしゃる医師に複数選択可で伺った「これまでの出産で利用された医療機関」についての集計結果をご紹介します。
男性医師(配偶者の出産方法)では母子周産期医療センター認定施設41.1%が最多、次いでクリニックが34.0%、僅差で母子周産期医療センター以外の病院(以下.その他病院)が31.9%で続いています。
女性医師でも母子周産期医療センター認定施設が最多で、男性医師よりも多い47.3%に。次いで、その他病院が30.8%、僅差でクリニックが28.6%という結果に。
助産院を選んだ方は男性医師・女性医師ともに少数派であることが分かりました。
さらに、将来的にお子様を持つことを考えている方に複数選択可で伺った「今後の出産で希望する医療機関」についての集計結果がこちら。とくに女性医師で母子周産期医療センターでの出産を希望する割合が高く、その他病院、クリニックについては実態よりも低い割合に。
助産院を希望する割合は少数派であることが分かりました。
周産期母子医療センターを推す声が多数、
ここからは自由回答で寄せられた「分娩施設」についてのご意見をご紹介します。
【出産時のリスクを第一に考えて】
- 産婦人科医が減少している。それを補うために助産院での分娩が考えられているようですが、安全にお産をするには助産院は危険だと考えます。ノーリスクの分娩だと思っていても突然危険なお産になったり、妊娠経過で少しずつ異常がおきてきてもそれに気づかなかったりするケースも多く、分娩時の重症の搬送や分娩時死亡の率は高いです。周産期センターで勤務している助産師はそれを知っているからか、助産院で分娩したい気持ちがあっても決して助産院では分娩しません。 (男性,60代,産婦人科系)
- お産にリスクがあることを医療関係者でさえ理解していない。お産に人それぞれの考え方があることは承知しているが、高次施設を利用しないのはリスクを上げる行為と思われる。無痛分娩も、産科医が行うものを選択することは考えられない。麻酔科医がお産を取り上げるようなものでは。(男性,30代,外科系)
- 新生児仮死のリスクはどの症例でもあるのでNICU(新生児集中治療室)、小児科当直医、NCPR(新生児蘇生法)を取得している医師が常にいる所以外での出産は考えられなかった。(男性,30代,内科その他)
- 自分の勤める大学病院で出産した。自分や子供になにか起きた場合、「仕方がなかった」と思えるよう最善の環境を選んだつもり。(女性,30代,整形外科系)
- 母子の安全を考えて、母子周産期認定施設しか選択肢にありませんでした。(女性,30代,-)
- NRFS(胎児機能不全)時に手術室に飛び込めること、NICU(新生児集中治療室)完備、麻酔科常駐を条件にした(女性,20代,小児科系)
- 高齢妊娠だったのであらゆる事態に対応できる病院にした(女性,30代,外科系)
- 分娩に特化した医師がいて新生児専門医が多数常駐している。麻酔科も緊急対応がしっかりできる。そんな施設を選びました。(男性,70代,小児科系)
- 小児科医として周産期のリスクは誰にでもあり、生後すぐに仮死に対応できず重症心身障害児になっているケースを多くみてきたので、総合周産期センターなどNCPR(新生児蘇生法)ができる医師がいる所での出産をお勧めします。(男性,30代,内科その他)
【現実との兼ね合いも重要】
- とにかく子供にとって一番安全な環境をと思い、1人目は総合周産期センターで出産。しかしながら、通院などを考えると2人目は同じようにするのは難しいので、近くの産院かなと考えている。(女性,30代,産婦人科系)
- 自分の職場に近いかどうか(立ち会いが現実的に可能かどうか)。産科の診療レベルに関しては、「平均以上」であれば、こだわりは少ないです。(男性,40代,外科系)
- 自分の職場で産んでもらいました。当時夜遅くまで仕事しており、他院にかけつける余裕がなく、また里帰りも現実的でなかったためです。(男性,40代,腎泌尿器科系)
- 家族が一緒に泊まれる病室があること(男性,40代,腎泌尿器科系)
- 立ち合いができること。特に子供の立ち合いができることにこだわりました(男性,30代,小児科系)
【クリニックを選ぶ理由があります】
- たまたま近所に信頼できる先輩が開業されていたので(男性,40代,整形外科系)
- 綺麗さ、食事のおいしさ、スタッフの評判も重要な要素です。(男性,30代,内科その他)
- ご飯の美味しさ、アフターケアのよい施設。(男性,20代,内科その他)
- 産院クリニックでは、鬼軍曹的な助産師の指導が少ないから。そして食事が旨い、ゆったり寛げる個室も完備されている。(男性,60代,循環器科系)
- 同窓生の営む産婦人科クリニックで、近隣では大変評判が良かったため。(男性,50代,腎泌尿器科系)
- 無痛分娩が可能で、研修医がいない。(女性,30代,外科系)
- 無痛分娩の可否に立地と施設の新しさ、そして何より病院食のクオリティが気になるので妊活時から探しています!ウェディングプランみたいに体験できたらいいのに(そしたら励めそう、まずは相手探しです)(女性,20代,腎泌尿器科系)
安全性の面から、周産期母子医療センターを推薦する声が多い一方、複数のお子様をお持ちの方からは第二子以降は現実的に考えて近隣のクリニックを選択されたというコメントが寄せられました。またクリニックについても、信頼のおける主治医のいる施設であれば、個室や病院食、産後ケアなどの面では優れているという声も届いています。
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