風邪薬を飲めば風邪は早く治る?風邪薬の本来の目的は
- 作成:2021/08/21
風邪薬(総合感冒薬)を飲むと風邪は早く治る、むしろ風邪薬を飲まないと風邪は治らない、と思っている人はたくさん居ます。これは、本当にそうでしょうか?
この記事の目安時間は3分です
Q.風邪薬を飲めば、風邪は早く治る?
A.治らない
風邪薬(総合感冒薬)を飲んでも、風邪が早く治ることはありません。風邪薬は、あくまで風邪のつらい症状を和らげるための「対症療法の薬」であって、風邪を「根本的に治療する薬」ではないからです。
風邪薬の大部分は、ウイルスの感染症
日本では、「風邪薬を飲んで風邪を治して仕事に行く」という姿を描いたテレビコマーシャルが長年お茶の間に流れ続けてきた影響もあり、風邪薬は風邪の根本的な治療になる、風邪薬を飲まないと風邪は治らない、風邪を治せる飲み薬や注射がある、と考えている人が多い傾向にあります1)。
しかし、風邪薬を飲んでも風邪が早く治ることはありません2,3)。これは、風邪というものが基本的にウイルスによる感染症であるのに対し、風邪薬には、こうした風邪の原因となるウイルスを退治する薬は含まれていないからです。また、直接効く薬があるウイルスは限られており、風邪を起こすウイルスでは基本的に使えません(例外:インフルエンザには特効薬があります)。
風邪薬の目的は、風邪のつらい症状をやわらげること
風邪薬には、熱や痛みをやわらげる解熱鎮痛薬、鼻水やくしゃみを抑える抗ヒスタミン薬、咳の症状を減らす咳止め、鼻詰まりを解消する血管収縮薬、鼻水や痰の粘りを減らす去痰薬…などなど、風邪の諸症状をやわらげるための薬が色々と配合されています。
つまり、風邪薬の目的は、風邪を早く治したり、根本的な治療を行ったりするものではなく、風邪のつらい症状を和らげること(対症療法)だ、ということです。
軽い風邪であれば、薬を使わなくても、消化の良いものを食べて、水分補給をしつつ、暖かくして寝ていれば基本的に自然と治ります。そのため、風邪をひいたからといって風邪薬を飲まなければならないわけではなく、あくまで療養に支障のあるようなつらい症状があるときに使うような薬だということは、押さえておく必要があります。
薬が多い分、副作用も多い
風邪薬には、風邪の症状に効きそうな薬がたくさん配合されています。そのため、どんな人のどんな風邪にもおよそ対応できる便利な商品と言えます。しかし、薬がたくさん入っているということは、それだけ副作用のリスクも高いということでもあります。実際、一般用医薬品による重篤な副作用の1/3は風邪薬が原因というデータもあり4)、決して安全・安心な薬ではありません。
また、たとえ重篤なものでなくとも、解熱鎮痛薬による胃の荒れ、抗ヒスタミン薬による眠気、前立腺肥大に伴う排尿障害の悪化5)、咳止めによる便秘、血管収縮薬や気管支拡張薬による高血圧や不整脈の病状悪化6)などのリスクも多々あります。こうしたリスクを上回るほど、風邪の諸症状を抑えることにメリットがあるかどうかは、冷静にしっかり判断する必要があります。「風邪薬を使わずに療養する」といった選択肢が優れる場合も、少なくはないはずです。
より安全な「必要な薬だけ」を選ぶ方法
ドラッグストア等には、風邪薬のように色々な薬がまとめて入っている商品だけでなく、解熱鎮痛薬だけの商品、咳止めだけの商品など、1つの目的だけに特化した商品も販売されています。そもそも、薬というものは「自分にとって必要最低限のものを使う」のが基本です。熱は大したことないのに解熱薬を飲む、咳はつらくないのに咳止めを飲む…といったことが起きてしまわないよう、自分が風邪の療養を行う上で必要な薬だけをピンポイントで選んで使う方が、賢い薬の使い方と言えます。こうしたピンポイントな薬の選び方が難しい場合は、ぜひ薬剤師や登録販売者に相談してください。
1) 社会薬学.34(1):7-19,(2015)
2) Cochrane Database Syst Rev. 2015 Sep 21;(9):CD006362
3) Cochrane Database Syst Rev. 2015 Nov 29;(11):CD009345.
4) 厚生労働省 「医薬品・医療機器等安全性情報No.293」
5) 薬学雑誌.128(9):1301-9,(2008)
6) Arch Intern Med. 2005 Aug 8-22;165(15):1686-94.
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