高齢者に増える弁膜症。息苦しさを感じたら医療機関へ
- 作成:2021/09/10
高齢化が進み、加齢が原因で心臓の機能が低下する患者さんが増えています。心臓の機能が低下したために息切れやむくみなどが生じる状態の総称を「心不全」と言い、その中でも高齢者に増加している「弁膜症」について、症状や受診のめやす、そして治療について、国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門心不全科部長の泉知里先生に教えていただきました。(取材日:2021年7月28日)
この記事の目安時間は3分です
息苦しさを歳のせいにしないで
弁膜症の中でも特に高齢者に増えているのが「大動脈弁狭窄症」という病気です。図の赤丸で囲んだ部分が大動脈弁で、ここが加齢によって硬くなると血液が通りづらくなり、心臓に負担がかかるようになります。
症状としては息切れや胸痛(胸の痛み)があり、70代後半から80代の方に多いのですが、これくらいの年齢の方だと少し歩いて息が切れるようなことがあっても年齢のせいだろうとか、体重が増えたせいだろうといってそのまま放置してしまうことが多いんです。
手術が必要なくらい重症の弁膜症でも正しく判断されずに潜んでいるケースも多いと言われていますので、息苦しいような症状がある場合はかかりつけの先生やお近くの医療機関に一度相談してみていただきたいです。
症状があれば、医療機関で血液検査を
息切れを訴える患者さんに対しては、血液検査でBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)という項目の数値を調べることで、心臓にどれだけ負荷がかかっているかが分かります。基準よりも高い数値が出ると、大きな病院を紹介されることもあるので、そうなったらぜひ早めに受診するようにしてください。
聴診やエコーで大動脈弁の異常を見つけることもできます。
弁膜症は、急に症状が悪化するようなものが少なく、基本的に病気の進み方としてはゆっくりです。そのため、お近くの医療機関を受診しても「少し様子を見ましょう」という判断になることがあるかもしれません。しばらく様子を見て、症状が良くならなければもう一度相談してみてもいいと思います。
弁膜症は治すことができる病気、手術も患者さんの負担が少ないものに
弁膜症が正しく判断されず、高齢者の中に潜んでいることに警鐘を鳴らしている理由として、弁膜症は治る病気であり、治療すると本当に良くなる、ということがあります。
いまはカテーテルの治療も進んでいるので、胸を開ける手術をせずに治療できる可能性もありますし、手術をする場合であっても小さな傷しか残さずにできるようにもなっています。心臓の手術というと、胸を縦に大きく切るようなイメージをもっている方もまだ多いと思いますが、治療法は進化していますので、心配な症状があれば早めに医療機関を受診して、治療につなげていただきたいです。
コロナ禍においても、医療機関では適切な感染対策を行っています。日本医師会・日本循環器連合でも「現在受けられている心血管病の治療は引き続きしっかり続けてください。心臓や血管に異常を感じたら、ためらわず速やかに医療機関を受診してください」というステートメント(※)を出しています。
※新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言下の心血管病診療に関する緊急声明
泉 知里 先生
国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門心不全科部長。
医学博士。総合内科専門医・循環器専門医・超音波専門医・超音波指導医・心エコー図専門医。
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