うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟− 発達障害の「告知」…子ども自身にいつ、どうやって伝える?
- 作成:2021/10/17
こんにちは。発達障害ファミリー父の、外科医ちっちです。 子どもたちに違和感を覚えてから5年。ようやく「自閉スペクトラム症」の診断がつきました。 今回のテーマは「発達障害の告知」です。子どもにいつ、どう伝えるか? 伝える方法について考えるきっかけは、長女の言った「わたしは障害者なの?」という言葉でした。
この記事の目安時間は6分です
本人が受け入れやすい? 告知の2つのタイミング
一般的には、次の2つの時期が考えられます。
①中学校1~2年ごろ
理由としては、ある程度、理解・分別もつき、かつ受験などのイベントまで少し期間があるから。
②物心ついた時
理由としては、療育に通ったり、療育手帳を使用したり、通級(※)などで「周りと少し扱いが違う」ことを幼少期から本人たちは感じているから。
※小中学校で通常の学級に在籍しながら、障害や特性に合わせた特別支援教育を受けられる制度。
伝える時期がいつであれ、親が子どものことで「暗く深刻」に伝えた場合、子どもは自分自身のことを責めたり、よりネガティブに受け止めたりする原因になってしまいます。
発達障害の人が持っている個性は、悪いことではありません。ただ、「一部のことが世間一般の平均よりかなり苦手」という一面です。この「かなり苦手」なことが、人との関わりや仕事、勉学など日常生活に影響する部分に出た時に、「発達障害」や「自閉症」と呼ぶだけです。
告知の鉄則は、「明るく伝えること」。暗く深刻にはNG!
たとえば、近視も極端に言えば「視覚障害」です。でも、それを伝えるとき、親はどう表現するでしょうか。いちいち真剣に話す場を作り、暗い表情で「お前は目に障害があるんだ」と伝えるでしょうか。
ほとんどの場合は、特に気張らず、本人に 「あー、視力落ちてきているね。まあ、漫画もゲームも面白いしなぁ。悪くなりやすいのかな。眼科に行って視力測ってもらって、眼鏡を作ろうか。今は黒板見えてるの? 席は前の方にしてもらう?」というのが一般的ではないでしょうか。
発達障害の告知に関しても、親から行う場合は、本人に不必要な自責の念を抱かせないよう、わかりやすく、明るく伝えることが大切だと思います。
大人が自分のことを話し合っている…。異変を察知した長女
前置きが長くなりました。我が家の長女いっちの告知はどうしたのか?
前回の記事でも書きましたが、長女いっちに自閉スペクトラム症の診断がついたのは、小学2年生の頃でした。そこから私たち家族は、様々な専門家と会ってきました。いっち自身から見た流れは、こんな感じだったことでしょう。
①学校で母とともに面談
↓
②通級が始まる
↓
③児童相談所の心理検査
↓
④児童精神科医の診察
↓
⑤半年後、再び児童精神科医の診察
何度も大人が自分のことを話し合っているわけです。何だかわからないけれどテスト(心理検査)を受けたり、医師らしくない医師と名乗る人と、病院らしくない部屋でいろいろと自分のことを聞かれるのです。いったい何をしているのだろう、と思うのももっともです。
どの段階で「あなたは自閉スペクトラム症なのだよ」と説明するのか、わたしたちはかなり悩んでいました。そんな時、いっちに「私は障害者なの?」と聞かれました。
小学2年生はまだまだ子どもだと思っていたけれど、大人の話を完璧に理解していたいっちは、自分が何を検査されているのか、医師や周囲が自分のことをどのように話しているのかを理解していました。
隠さず、嘘をつかず、小2の娘に送った言葉
発達検査と医師の診察後のことでした。いっちが珍しくバチっと目を合わせて、はっはに話しかけてきました。普段は目線が合わないことばかりなのでドキリとしました。
「ねぇ、お母さん。図書館で調べたんだけど、自閉症って突然叫んだりする人のことでしょう? いっちは違うと思う。いっちは障害者なの?」
いっちは知らぬ間に1人で図書館に行って、漫画『光とともに…~自閉症児を抱えて~』(戸部けいこ)や、大人向けの自閉症についての本を読んでいたのでした。驚きました。
この行動と問いかけがあったことで、頭が良く、自分で外部からの情報を調べることのできるいっちには、隠さず、嘘をつかずに説明するべきだと思いました。
一言でいうと、マイペースで気持ちの切り替えが難しく、だらだらしてしまうことの多い長女いっち。私たちは本人に次のように「告知」をしました。
「いっちはほかの人より心が大きいみたいだね。だから、心を動かすのが大変。だけど、いったん動かし始めると、みんなより集中できる人なの。
ただ、今は学校でみんなと同じことを同じようにできない時があるでしょう。それだといっちが困って悲しい思いをするかもしれないから、それはできるように変えていこう。それだけだよ。
病院の先生は、いっち本人や周りの人が困っていたら自閉症、困ってなかったら自閉症とは言わないって話していたよ。白は白、黒は黒ってハッキリわかれているわけではなくて、結局のところ個性だよ。それに、突き詰めて言えば、本に書いてある診断基準は、世の中の全員が当てはまることだと思う。お父さんもお母さんも、これは当てはまるなぁというところばかりだよ。
だから手帳を持っているかどうかというのは気にしなくてもいいし、家族以外には言わないからお友達にはわからないよ」
告知への渋い反応に焦る親…。ある本が救いに
私たちが話している間、黙って目を合わせて聞いてくれていたいっちは、「ふーん」と腑に落ちない様子でした。
どうしよう。いっちは納得していないぞ。こっちが話し終わるまで目を合わせてくれるくらい、とても興味を持っているこの話題。どう説明したらポジティブにとらえてくれるのだろうと、数日間あれこれ考えました。
そうして考えた結果、言葉を足しながら、児童精神科の医師から勧められた、子ども向けの自閉症に関する本『あたし研究』(小道モコ)を一緒に見て、「とにかくあなたは大丈夫」と言葉をかけました。
結果的に本からの情報をインプットする能力の高いいっちには、本を見せて説明する、というのが一番理解しやすく、受け入れやすいものでした。
この本は、自閉症スペクトラムである著者自身の視点から見た世界がイラストで描かれていて、低学年の子どもにも理解しやすいものでした。また、親から見ても、こういう世界で生きているのかと新たな発見が多い一冊でした。
まとめと次回予告
告知はいつ? どのように伝えるか? 答えは、それはその子の性格やそのときの状況によるとしか言えません。次回、長男にっちへの自閉スペクトラム症の告知も併せて、あなたの参考になれば嬉しいです。
外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟」
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる」
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti
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