在宅勤務でやる気が出ない「在宅ディモチベーション状態」とは?

  • 作成:2021/12/19

AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、仕事のやる気が出ず、夜も眠れないというご相談です。

堤 多可弘 監修
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷  副院長/精神科医・産業医
堤 多可弘 先生

この記事の目安時間は3分です

在宅勤務でやる気が出ない「在宅ディモチベーション状態」とは? 在宅勤務でやる気が出ない「在宅ディモチベーション状態」とは?

【今回のお悩み】
ここ1~2年、大きな仕事も任されつつも、昔のようにやる気が全く入らず何とかこなす状態です。仕事環境も人間関係も良いのに、私のやる気にスイッチが入りません。
在宅勤務も続いているので、ダラダラしてしまう時間も長くなってきています。心のどこかで、もう会社員はやりたくないとも思っています。ただ、辞めてしまうとその後の心配もあります。何とかあと一踏ん張りし、新しく移動した部署での実績はあげたいとも思っています。睡眠も平日は比較的眠りが浅く、夜中に一度は起きてしまいます。何かよい方法はありますでしょうか?(40代・女性)

医師の回答

やる気スイッチを阻む可能性がある、2つのメンタル不調

ご質問ありがとうございます。
異動した部署で実績を上げたいと思いつつもやる気スイッチが入らない、という状況にお困りなのですね。

大きく考えられる可能性は2つあります。
(1)うつ病などのメンタル不調の可能性
(2)”在宅ディモチベーション”の可能性

まず、①うつ病などのメンタル不調かどうかは、もう少し詳しくお話を伺わないとわかりません。医療機関に受診いただくのが一番確実です。

ただ、相談者様は「夜中に一度は起きてしまい、眠りも浅い状態が続いている」ということので、少なくとも不眠症の可能性はあると思われます。

不眠は、うつ病や適応障害など様々なメンタル不調で現れる症状です。
他にも食欲の低下や思考力の低下、普段よりも物事に楽しみや興味を感じなくなるなどがあれば、よりその可能性は高まってきます。
「くう、ねる、あそぶ、考える」ができなくなってきたら要注意と覚えておいてください。

「在宅ディモチベーション」状態の人が増えている

やる気スイッチが入らないもう一つの可能性は、➁”在宅ディモチベーション”が考えられます。

新型コロナ感染症の流行以降、特に在宅勤務が広まってからは、少し特徴的な症状の人たちを診察や産業医の現場で拝見することが増えました。

「うつ病や適応障害というほどではないが、以前ほど意欲などが上がらない」という人たちです。

ちょうど相談者様のように在宅勤務が長引き、仕事などには取り組めているものの、なんとなく以前のようにはやる気が出ないという状態です。これを私は”在宅ディモチベーション”状態と呼んでいます。

こちらに関しては、主に2つの原因考えられます。
1.在宅勤務による生活リズムのメリハリ消失
2. モチベーションが上がる出来事の消失

メリハリのある生活リズムと、適度な運動を心掛ける

順番に説明していきましょう。

〈1.在宅勤務による生活リズムのメリハリ消失とは?〉
在宅勤務ではダラダラと仕事をしてしまったり、ずっと家にいる状態で運動不足になったり、日光に当たらなかったりするせいで、自律神経が乱れてしまうことがよくあります。自律神経が乱れてしまうと、不眠などのほか、やる気スイッチが入らない状態にもなってしまいます。

対処としては

  • 起床時間や仕事の時間をしっかり決め、メリハリのある生活を送る
  • 朝必ず外に出て日光を浴びる
  • 勤務前や勤務後の運動を心がける

などによって改善することがあります。こういったことをしていなければぜひ試してみてください。

〈2. モチベーションが上がる出来事の消失とは?〉
コロナ禍になる前は、職場で仲間から「ありがとう」と言われたり、仕事の打ち上げなどで一緒に喜んだりと、やりがいを感じる場面が多くありました。しかし、在宅勤務ではこういった機会が減り、やりがいを感じずらくなってしまいます。その結果、モチベーションが下がってしまうのです。いってみれば、観客のいない独り相撲をずっととっているような気持ちです。

こちらに関しては、できるだけコミュニケーションの機会を増やすなどの工夫の他、自分なりのやりがいを見つけることが重要です。例えば、日記を書いて自分の成長を記録してみたり、 仕事そのものの成果に着目してみたりという工夫が考えられます。

対策を2~3週間続けても効果がないなら、受診のタイミング

最後になりますが、あまりにもやる気スイッチが入らずにお困りの場合は、うつ病などのメンタル不調がないかどうか、他の症状について考えてみてください。もし思い当たるものがあったり辛くて仕方がなかったりする場合は、医療機関にかかると良いでしょう。

睡眠がしっかり取れるようになるだけでも、状態が改善する可能性があります。

まだ受診せずにもう少し様子を見てみたければ、今回お伝えした自分でできる工夫を試してみるのも一つの手です。2~3週間続けてみて効果が出ない場合や、どんどん悪化するようであれば受診を検討してみてください。

弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップへのアドバイザー業務を務めるとともに、企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。

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