テレワークが辛くて涙がこぼれる…医師が勧める「3つの視点」のセルフチェック
- 作成:2022/06/25
AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、テレワークが続いて気分が落ち込むというご相談です。
この記事の目安時間は3分です
【今回のお悩み】
テレワークを始めて1年以上になるのですが、夕方頃から気分が落ち込み、仕事が手につかなくなる状態が半年ほど続いています。ここ1ヵ月では、ちょっとしたミスをしてしまったり、上司の態度が辛く感じて泣いてしまったりすることも多々あります。
午前中は調子が良いのですが、上司からの電話やメールで徐々に不調がでてきてしまい、いつも生産性が下がっているように感じます。
しかし、会社に出勤した日はこのような落ち込みの症状は出ません。また、金曜日の夜から土日にかけてはとても元気になる為、クリニックを受診するほどではないと思ってしまいます。
平日は生きている心地がしません。環境にも恵まれて、大変な仕事をしているわけではないので根性が足りないのか、病気になりかけているのか分かりません。受診すべきでしょうか。(20代・女性)
「大変な仕事ではない」と思っても不調に至るわけ
テレワークが続く中で気分が落ち込むようになり、仕事に支障をきたして困ってらっしゃるのですね。相談者さんのように、仕事に関する環境変化によって業務パフォーマンスが下がってしまい悩んでいる方は一定数いらっしゃいます。「自分だけ?」と不安になることはありません。
米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が作成した「職業性ストレスモデル」(※)は、仕事のストレス要因の他、個人要因・仕事外要因やそれらの緩衝要因など、いくつかの要因によってストレス反応が生じる流れを示しています。
ストレス反応に対して適切な対処ができないでいると、メンタル不調などの疾病へつながります。仮に、相談内容にあるとおり「大変な仕事をしているわけではない」のだとしても、様々な要因のバランス次第ではメンタル不調に至る可能性がある、とも言えます。
ご相談いただいた内容からすると、出社日の症状は目立たないとのことですから、テレワークに関する負荷が主なストレス要因となり、現在の状態に至っているのかもしれませんね。既に気分の落ち込みが半年も続いており、仕事のパフォーマンスが低下しているとのことで、何らかの対処が必要となります。
一般的に、テレワークでは以下の問題が起こりやすいと言われています。
□ オンとオフの区切りが難しくなり、生活リズムが乱れる
□ 社内コミュニケーションが取りづらくなり、強い不安やストレスを感じる
そこで、ご自身の生活を3つの視点から振り返ってみましょう。
① 業務時間に区切りをつけているか
② 健康的な生活リズムを保っているか
③ 不安やストレスを放置していないか
仕事ストレスによる不調は、自助努力だけでは解決しにくい
① 業務時間に区切りをつけているか
テレワークでは、タイムマネジメントを意識しましょう。例えば、始業・休憩・終了時間を定めておき、だらだら残業せず時間内に仕事を終えるよう「やること」をリスト化して明確にすることをお勧めします。同時に、業務時間中に「やらないこと」もあらかじめ明確にしておきましょう。なお、仕事とプライベートを区切るためには、服装を変える、空間を仕切るなど、見た目の分かりやすさから入ると始めやすいですよ。
② 健康的な生活リズムを保っているか
テレワークと出社日、休日で生活リズムを大きく変えないように意識しましょう。決まった時間に起床してしっかりと朝日を浴び、規則正しい食事をとること、夕方以降はカフェインを控えること、睡眠前にディスプレイを見ないことなどを心がけることで、睡眠リズムが安定します。なお、テレワーク期間中に飲酒量が増えた方は要注意です。寝酒をしない、飲酒量を適度な量に留める、休肝日を設定するなど、アルコールとは健康的な関係を保ちましょう。
③ 不安やストレスを放置していないか
ご相談内容の「気分が落ち込み、仕事が手につかなくなっていること」や「生産性が下がっているように感じること」について、周囲へ相談されているでしょうか。仕事に関する様々な不安やストレス、心身の不調は自助努力のみでは改善しにくい場合もあります。
既に業務へ支障が出ているようですから、まずは上司へ積極的に相談してみましょう。それに加えて、会社の産業保健スタッフ(産業医や保健師)への相談や、医療機関の受診を通じて専門家からアドバイスをもらうことをお勧めします。専門家と会社が連携することで、業務環境に関する必要な配慮も得やすくなるでしょう。
榊原 亙(さかきばら わたる)
精神科医・産業医
榊原産業医パートナーズ株式会社代表、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷パートナー医師。複数のスタートアップや中小企業の産業保健活動に携わる。メンタルヘルスや健康経営に関する発信およびコンサルティングを積極的に行っている。
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