低気圧が来ると、片頭痛は悪化するって本当?
- 作成:2022/01/17
「今日はなんとなく頭が重い…」と感じながら天気予報を見てみると、強い低気圧が近づいてきていた。そんな経験をしたことのある人は多いかもしれません。巷では、低気圧と頭痛には関連があるようにもよく述べられていますが、果たしてこれは本当なのでしょうか。
この記事の目安時間は3分です
気圧と片頭痛は、少しだけ関連するかもしれない
気圧と頭痛の関連は色々な国が注目しており、様々な研究が行われています。たとえば、片頭痛患者の半数近くが、温度や湿度・天候・気圧などの気象条件に敏感であるという調査結果があります1)。実際に、雨の日には痛み止めの『ロキソニンS』を購入する人が多い2)ことから、天気の悪い日に頭痛を感じる人が増える傾向は、確かにあるようです。しかし一方で、気象条件と片頭痛の症状にはほとんど関連がない、あるいは、関連があったとしても極めて小さい3,4)という報告もあります。
つまり、気圧と片頭痛には少しは関連があるかもしれませんが、それだけで片頭痛を起こしやすくなるとか、片頭痛が悪化するということは基本的になさそう、と考えるのが妥当と思われます。事実、片頭痛は気圧だけでなく、ストレスや睡眠不足、匂いの強い香水や食品の刺激5)など様々な要因が重なって起こると考えられています。そのため、天候の条件だけをもって、個人レベルで片頭痛発作を予測するのは困難6)とされています。
片頭痛が月に10日以上ある場合は、病院で相談を
「気圧が低いので頭痛が悪化する」というのは、あながち迷信だとも言えなさそうですが、なんでも気圧のせいにして済ませて良いかというと、そういうわけでもありません。たとえ気圧の影響を受けていたとしても、片頭痛が1ヶ月に10日以上起こるようであれば、一度病院で相談することをおすすめします。その理由の一つが、“痛み止めを使い過ぎる”ことで、薬が原因の頭痛(薬物乱用頭痛)を起こしてしまうリスクがあるからです。
国際頭痛学会の定義では、OTC医薬品のような痛み止めを月に10日以上使っている…そんなことが3ヶ月以上続いている場合は、「薬物乱用頭痛」に該当します7)。この場合、痛み止めを追加で飲んだり種類を変えたりするのではなく、原因となっている薬を飲むのを中止した方が良い可能性が大いにある、ということです。
気圧のせいかどうかはさておき、片頭痛の回数が多いと感じたときには、まずは自分がどの薬をどのくらいの頻度で飲んでいるのか、その記録をつけてみてください。場合によっては、“予防薬”を使って片頭痛の頻度そのものを減らすこともできますので、その記録をもとに是非病院で相談してください。
気候と関係しそうな体の不調は、他にも意外とあるかもしれない
気候と関係しそうな体の不調は、何も頭痛だけに限りません。たとえば、関節リウマチは低温になる冬季や高湿度になる梅雨の時期に悪化する人が多い傾向にあったり8)、日照時間が短くなる冬季には”うつ状態”になる人が増える傾向にあったり9)、大気圧が低い(1013hPa未満)日は耳鳴りやめまいなどの症状を訴える人が多い10)という調査結果もあったりします。
気候の変化は自分でコントロールできるものではないので、あまり気にし過ぎるのも良くないですが、気温が大きく下がる、曇りの日が続く、大きな低気圧が近づくといった情報を天気予報で見かけた際には、いつもより少しだけ早く寝たり、無理を避けたりといった、ちょっとした心がけができると良いかもしれません。
1) Headache. 2004 Jun;44(6):596-602.
2) Int J Biometeorol . 2015 Apr;59(4):447-51.
3) Cephalalgia. 2011 Mar;31(4):391-400.
4) Headache. 2006 Jan;46(1):64-72.
5) Cephalalgia. 2007 May;27(5):394-402.
6) Ann Clin Transl Neurol. 2015 Jan; 2(1): 22-28.
7) 日本頭痛学会「国際頭痛分類(第3版)」
8) 日本臨床免疫学会会誌.37(1):25-32,(2014)
9) Expert Opin Pharmacother . 2018 Aug;19(11):1221-1233.
10) Otol Neurotol . 2017 Feb;38(2):225-233.
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