うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟――障害名のカミングアウト「うちの子と一緒に遊ぶのを禁止」と言われて
- 作成:2023/07/26
こんにちは。外科医ちっちです。うちの3人の子どもは、全員が自閉スペクトラム症の診断を受けており、いくつかの困りごとを抱えています。一緒に生活するうえで、「こんな発想でこんなことをしてしまうのか」と驚かされることもあれば、「こうとしか考えられないのか」と辛い思いをすることもあります。この連載では、「変わった行動をしてしまう」親子が快適に過ごそうと試行錯誤する中で考えたことを書いています。今回は「障害名を伝えるということ」がテーマです。
この記事の目安時間は3分です
診断名を聞いて、急に態度が変わる人たち
世の中には、予想以上に色々な感性の人がいる。相手に何らかの障害が診断されているという情報を聞いた時に、
馬鹿にしていいと思う人
甘えてくるなと怒り出す人
「障害者」という別の生き物になったと扱い始める人
何かの才能があると言い出す人
優しさを学ぶための教材として扱う人
が、現実にいました。その人の年齢、職種や経験・知識に関係なく。
「それ、診断名を聞く前から本当に思っていましたか?」と思ってしまいます。
診断名は「その人の困ったこと」の呼び名でしかない
1番驚いたのは、それまで仲良く過ごしていた子の親が、うちの子の診断名を聞いてから、その子と、うちの子を一緒に遊ぶのを禁止にしました。
うちの子から「発達障害が感染するかもしれないから」。
私は外科医として働いています。子どもの発達障害とは領域が違いますが、自分自身は診断する側として「診断」はあくまで「状態」の後にあると認識しています。
自分の領域で言えば、盲腸(虫垂炎)と診断された人は、診断される前から盲腸(虫垂炎)です。診断前と人間は変わりませんし、診断されることで原因が分かり、対策や対処が出来るというだけです。
その人ではなくて、「その人の困ったこと」をどう呼ぶかの話。呼び名(診断名)がついても、その人本人は今まで通りと変わりない。どれだけ呼び名を否定しても、その人の困りごとは消える訳ではないですし、呼び名がついても、その人自身は変わりません。
子どもの障害を知っている人が増えると、確率論で変な考えの人も増えました。成長に伴って、親が把握している以外のつながりやコミュニティも増えました。
子どもは、子どもの世界を作っていっています。うちの子どもたちには、障害名は小学校低学年の頃に告知しています。自分の得意不得意と向き合いやすいために。それから、こういう「変な扱いをする人との距離の取り方」を意識できるように。
誤解されないように書いておきますが、
「発達障害は感染しません」。
一緒に遊んだから、何かが起きることもないです。
優しさを学ぶ教材でもないですし、一緒にいると悪いことが起こることもないです。
苦手なことが日常生活で目立ちやすいだけの、ただの人です。
普段、家族として障害者でもある子どもたちと暮らしていると、障害者ではなく「○○さん」「△△くん」「□□くん」としか思いません。
良いところもちょっと足りないところも、すべてひっくるめてその人だからです。
診断の情報が増えても、少し対処の仕方の選択肢が増えるくらいです。
ですが、世間はそうは見てくれない。その辺りに苦しさを感じます。
以前は、子どもがパニックになった際、周囲の人が少し落ち着いて対応出来るかと期待して障害名を伝えていましたが、最近は伝えることをやめました。
外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟」
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる」
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti
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