子宮後屈の原因、症状、妊娠・出産への影響 治療・予防・再発の可能性は?
- 作成:2016/09/13
「子宮後屈」とは、子宮が背中側などに傾いている状態です。子宮後屈自体は病気ではありませんが、治療が必要になる場合もあります。子宮後屈について、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
子宮後屈の原因
多くの方の子宮はお腹側へ傾いている「子宮前屈」ですが、「背中側へ傾いている状態」あるいは「背中側へ曲がっている形」の子宮を指して「子宮後屈」と言っています。したがって、子宮後屈は病気ではありません。子宮後屈の女性は、女性全体の約20%程度存在しているといわれています。加えて、分娩後しばらくの間は、さらに多くの方が子宮後屈になっている傾向があるようですので、子宮前屈、子宮後屈の状態が時によって変化している可能性もあるかもしれません。
子宮後屈の原因は、先天性(生まれつき)の場合あるいは骨盤内の疾患が原因となっている場合の2つが考えられていますが、ほとんどの場合が先天的なものです。骨盤内の病気が原因となる場合は、骨盤内の炎症そして子宮内膜症が原因となり、子宮が他の臓器や骨盤壁に癒着したために後屈したものだと考えられています。
子宮後屈の症状
先天性の子宮後屈の場合、自覚症状はまったくありません。ただし、子宮の発育不全を伴っている方では、生理異常(不順や無月経など)、腰痛、生理痛などが現れる場合があります。
病気が原因となり癒着が起こってる場合、主な原因となっている子宮内膜症の症状が出ています。子宮内膜症の特徴的な症状は、つらい生理痛、不正出血、多量の経血、骨盤痛、月経以外での下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛などです。
妊娠、胎児、出産への影響は
子宮後屈で一番気になることは、妊娠できるのかどうかという点です。先天性の場合、精子が入りにくく着床しづらいため不妊傾向であるという意見もありますが、医学的には証明されていませんし、関係ないという意見も多数あります。自分が子宮後屈だということすら知らない人も大勢いますので、あまり気にしないほうがよいでしょう。また子宮後屈そのものの出産への影響は特に報告されていません。
ただし、子宮発育不全の人は、子宮後屈になり、流産を繰り返すことが習慣になる傾向があるといわれていますが、実際には、子宮後屈が原因というより、ホルモン分泌の低下による習慣性流産と考えた方が良いかもしれません。生まれつき子宮発育不全の人ではなく、後天的に子宮発育が止まってしまった人もいます。思春期以降の卵巣機能低下により女性ホルモン分泌が低下する状態が長い間続き、それまでは正常に発育していた子宮が委縮してしまう場合です。また思春期だけではなく、化学療法を受けた方や膠原病の方では早期閉経という状態が起こることがあり、子宮の発育が止まってしまうことがあります。またストレスを抱えている方や肥満の方でも子宮発育不全が起こる可能性が高くなっています。子宮発育不全の状態では、卵巣から分泌されるエストロゲンの量が少なくなっていますので、ホルモン治療が有効といわれています。
子宮内膜症が原因となり癒着が起こっている子宮後屈の場合、卵管の周囲で癒着が起こっていると不妊の原因になるといわれています。卵管の癒着は剥離手術(はくりしゅじゅつ、はがす手術)が可能です。
何科を受診?
子宮後屈の診断は、婦人科を受診してください。診断は、主に内診と超音波検査です。内診は膣に指を挿入し、子宮の大きさ、形、向きを調べます。内診は癒着や子宮の痛みを発見する重要な診察といわれています。超音波検査は腹部に器具をあてる腹部エコー、あるいは膣内に器具を挿入する経膣エコーがあります。
治療方法は?予防は可能か?再発の可能性は?
子宮後屈は、ほとんどが先天性で、無症状です。また病気でもないため、特に治療の必要もなく、特に予防策もありません。また先天性の場合は妊娠や出産をすると自然に子宮が正常な位置へ戻ることもあるといわれています。子宮内膜症が原因となって子宮後屈がおこっている場合は、子宮後屈そのものではなく、疾患である子宮内膜症の治療あるいは癒着した内膜を外す手術が行われます。子宮内膜症だけでなく子宮の疾患を予防する対策として一番良い方法は、定期的に婦人科で子宮検査を受けることです。色々な影響が出る前に子宮の状態を把握しておくことが大切です。
子宮後屈についてご紹介しました。妊娠への不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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