「プラセボ(プラシーボ)」とは?「病は気から」の科学的根拠?
- 作成:2016/03/11
「プラセボ(プラシーボ)」とは、日本語で言うと「偽薬」とも言われます。プラセボを服用することで、科学的な効果が出ることが実証されているため、薬などの試験の際に使われることがあります。プラセボの考え方などを、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
プラセボって何?偽の薬?
「プラセボ(プラシーボ)」とは、日本語で「偽薬」とも言います。「にせの薬」となれると不安があるかもしれませんが、決して、悪さをする薬ではありません。薬としての効果がないものを薬と同じ形にしたものです。ところが、この薬として効果がないはずの「プラセボ」を服用しても、一部の人は病気や症状の改善がみられることが科学的に明らかになっています。
偽の薬は、健康に影響しない?無理やり、飲まされるか?
プラセボは、乳糖やでんぷんを材料としていて、錠剤やカプセルなど見た目が薬に似せてあるものです。乳糖もでんぷんも食事に含まれるもので、量も微量ですから、体への害はありません。
過去の全国調査では医師の中で、「患者にプラセボを処方したことがある」と答えたのは88%でした。またそのうちの半数が、患者にプラセボであることを説明していませんでした。ここにプラセボという薬の扱い方の難しさがあります。プラセボの効果は本人が薬を思い込むことで効果を発揮するからです。「これは砂糖です」と話してしまえば、プラセボの効果は期待できず、処方する意味もなくなってしまいます。ただ、もう一度覚えて置いていただきたいのは、プラセボは害のあるものではできていない、という点です。
プラセボ効果って何?
プラセボをよく使われる状況は薬の臨床試験です。ある薬の効果を証明するために、一部の人には本物の薬(実薬)を、残りの人には見た目が全く同じであるプラセボを服用してもらい、その効果を比較するものです。
この薬の臨床試験では、よく「二重盲検法(にじゅうもうけんほう)」という方法が行われます。これは、薬を飲む本人だけでなく、薬を処方する医療者側も実薬(本物の薬)とプラセボのどちらを処方しているかわからない状態で試験を行うことです。
なぜ医療者にも知らされないかというと、患者だけでなく、医療者側が本物の薬を使っているかどうかを知っていると、効果を比較する際の試験に影響が出ることを防いでいます。それほど「気持ち」の問題は薬の効果に影響を与えるのです。
プラセボ効果の例 「病は気から」?
「病は気から」という、古くからの言葉があります。病気になったり、病気が治ったりする一部に気持ちの持ちようも関連している、ということです。例えば、癌と診断された時に、「癌と闘う決意を持った人はあきらめた人よりも生存率が高かった」という報告があります。また同じ癌患者でも、「結婚している人は独身の人よりも長生きした」という報告もあります。励ましてくれる人がいる、というだけで病気の経過にも影響を及ぼすと、科学的にも考えられているのです。
薬の臨床試験の多くでは、実薬の方がもちろん効果は高いのですが、実はプラセボにも弱いながら効果を認めます。これは、痛み・不眠・血圧など、ストレスや気持ちが関連した症状にももちろん見られますが、自分で通常コントロールすることができないコレステロールの値や癌の進行にまでさえ効果があります。
そもそも薬は、必要のない人にとっては毒にもなるものです。「薬が必要」というのは「患者が薬を欲しがっている」ということとは異なります。医学的に必要であるという意味であり、医療者でしか判断できないことなのです。しかし中には「私は薬を飲まないと治らない」と思い込んでいる患者もいます。そのような場合、不必要で、時に体に害を及ぼすかもしれない実薬を処方するよりも、「プラセボで効果があればよいのではないか」と考える医療者もいます。
プラセボ(プラシーボ)についてご紹介しました。もしかして薬の効果などに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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