明確な原因がわからない「慢性的な腰痛」を解消する、薬以外の有効的な方法
- 作成:2021/10/26
新型コロナウイルス感染症の拡大が続く昨今、リモートワークや外出機会の減少といった要因で、慢性的な腰痛に悩まされている人も少なくありません。病院へ行っても原因はよくわからず、湿布薬を処方されるくらいで、良くなったり悪くなったりをくり返してスッキリしない・・・そんな悩みを抱えている人も多いでしょう。その場合、薬をあれこれと使うよりも、「運動」を始めてみるのが意外と効果的かもしれません。
この記事の目安時間は3分です
明確な原因が見つからない「慢性的な腰痛」は、繰り返すことが多い
日本では、腰痛になった人の3人に1人が、1ヶ月以内に病院を再受診するという研究もある1)ほど、腰痛は繰り返すことが多いものです。病院でレントゲンなどを撮って検査をしてみても、80%近くの人で“明確な原因”が見つからない2)という報告もあり、「原因ははっきりしないけれど、よく腰が痛む」といった“腰痛持ち”のような状態で暮らしている人は、多くおられます。特にいま、コロナ禍の中ではデスクワークの増加や運動不足によって、慢性的な腰痛に悩む人は増えてきているようです。
もちろん、検査で骨や椎間板、神経などに異常が見つかった場合は、その治療を優先させることが大切です。また、ぎっくり腰のような急性の腰痛や、ケガをしている場合には、安静に過ごす必要があります。しかし、原因がよくわからないまま繰り返す慢性的な腰痛というのは、実は運動不足が一番の原因であることも多くあるのです。
慢性的な腰痛には、薬よりも適度な運動の方が効果的という研究も
こうした慢性的な腰痛には、病院で処方される薬やドラッグストア等で購入できる痛み止めなどが有効です3)。しかし、「運動」も慢性的な腰痛には効果的4)で、薬を使うよりもその効果が長続きすることがわかっています3)。そのため、色々と薬を使ってみてもスッキリしない、よく腰痛をぶり返してしまう・・・という人で、医師から運動を禁止されていない場合には、適度な運動を始めてみるのが最も良い治療法になると考えられます。
運動は有酸素運動、ストレッチ、ピラティス、いずれもそれなりに有効であるという研究があるため5)、運動の内容を厳密に考えるよりは体を動かすことが重要と言えるでしょう。中には、Nintendo Switchの「リングフィットアドベンチャー」を週1回40分行うことで、痛み止めを使うよりも腰痛が改善した、という研究結果もあります6)。自分の好きなもの、始めやすいもの、継続しやすいものを選ぶのが良いと考えられます。
なお、運動は腰痛だけでなく、首や肩の慢性的な痛みにも効果的だという報告があります7,8)。医師から運動を禁止されていない、動かすことで痛みが強まるなどのトラブルがない人の場合には、ストレッチなどの運動を取り入れてみるのも、良い選択肢になります。
適度な運動は、高血圧や糖尿病の予防・改善にも効果
適度な運動を行う運動療法は、慢性的な腰や首の痛みを和らげるだけでなく、高血圧や糖尿病などを予防・改善するのにも効果的です。たとえば、糖尿病の改善を目的に運動を行う場合には、有酸素運動と筋力トレーニングの両方を組み合わせること、週に150分以上の運動を行うことが効果的とされています9)。
“適度な運動”は人によって捉え方が様々ですが、有酸素運動はできるだけ毎日続けて(※運動しない日が2日以上連続しないように)行うこと、逆に筋力トレーニングは連続して行わないよう週2~3回を目安に、両方を組み併せて行うことが推奨されています10)。膝などに不安がある場合には、関節などに負担が少なく、なおかつ有酸素運動と筋力トレーニングの両方に役立つ水中ウォーキングなどが良い選択肢になります。
1) J Orthop Sci . 2015 Jul;20(4):742-9. PMID: 25862328
2) N Engl J Med. 2001 Feb 1;344(5):363-70. PMID: 11172169
3) Can Fam Physician . 2021 Jan;67(1):e20-e30. PMID: 33483410
4) Ann Intern Med . 2005 May 3;142(9):765-75. PMID: 15867409
5) Games Health J . 2021 Apr 22. doi: 10.1089/g4h.2020.0180. Online ahead of print. PMID: 33891508
6) Br J Sports Med . 2020 Nov;54(21):1279-1287. PMID: 31666220
7) S Afr J Physiother. 2017 Nov 28;73(1):392. PMID: 30135909
8) Clin Rehabil. 2016 Jan;30(1):64-72. PMID:25780258
9) JAMA . 2011 May 4;305(17):1790-9. PMID: 21540423
10) Diabetes Care . 2016 Nov;39(11):2065-2079. PMID: 27926890
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。