うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟− 読み書き障害の子どもも使いやすい!聞いて学ぶ「デイジー教科書」 を早く知りたかった

  • 作成:2022/06/18

こんにちは。外科医ちっちです。 最近広く知られるようになった発達障害ですが、その中でも長年社会に理解がされづらかった障害があります。それが「ディスレクシア」(読み書き障害)です。知的障害がないのに、文字が読めない・書けないというのは、未だに理解されづらい症状です。 学習障害に対しての支援は様々ありますが、今回はあまり知られていない便利なグッズを紹介します。ディスレクシアの診断の有無にかかわらず、教科書のフォントや背景色、字の大きさによっては読みづらく感じる子どもはいて、そうした子におススメです。便利な道具を利用することで生活のしやすさは確実によくなります。

外科医ちっち 監修
 
外科医ちっち 先生

この記事の目安時間は3分です

読み書きが苦手な長男。音読はモールス信号のようで…

長男にっちは、読み書きが苦手です。字を読むのは疲れるらしく、音読の宿題では、毎日イライラしています。抑揚ゼロ+早口なので、音読というより「モールス信号の伝達」を聞いている気分でした(伝わるでしょうか)。

平均的な人「ちいちゃんの かげおくり。 ちいちゃんは……」
にっち「チイチャンノカゲオクリチイチャンハ……」

単語の区切りがなく、文字の音だけを発するので、文章として理解しづらい話し方だったのです。

読み書き障害の子どもも使いやすい!聞いて学ぶ「デイジー教科書」 を早く知りたかった

文字を正確に読もうとすれば、単語として頭に入らない。
「お・じ・い・さ・ん・は・・・で? 何て書いてあるの?」という具合です。

ADHDの多動な部分もあり、宿題を早く終わらせたい気持ちもある。よって、「大体こんなこと書いてある」的な学校で覚えてきた文章を、超超超早口で読み上げています。

宿題の意味とは…。ただ、時間を無為にするだけで、何も身についていないのでは?
私は、宿題に関しては楽しんでできない、勉強を嫌いになるくらいならやらなくていい、と考えています。しかし、長男には伝わりません。自閉スペクトラム症の性質により「決まりを守る」「皆と違うことはできない」「先生が言うことは絶対守る」と、何が何でもやろうとします。

音読の時間は、とにかく心に負荷がかかり、癇癪を起こしやすくなります。教科書を投げる、破く、自分を叩き始めます。「宿題をやらなければいけない」と自分を追い込む長男VSどうにもこうにも読み書きができない長男の内戦です。

これは本当に大変でした。せめて量を減らそうにも本人が納得しないので、怒り出します。

読み書き障害の子どもも使いやすい!聞いて学ぶ「デイジー教科書」 を早く知りたかった

教科書の進化! 聞いて学ぶ「デイジー教科書」

にっちは会話はできていて、音で伝えた文章であれば、復唱する際も変な話し方にはなりません。 Amazonのオーディオブックサービス「Audible」のように、音で学ぶほうが合うのではないか? と考えていましたが、教科書にはありません。
そんな中で見つけたのが、教科書読み上げに対応している「デイジー教科書」です。

デイジー教科書は、公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会情報センターが作成・公開しています。

〈マルチメディアDAISY図書再生 「ごん狐」〉

読み書き障害の子どもも使いやすい!聞いて学ぶ「デイジー教科書」 を早く知りたかった

早速、長男に試してみると、次のようなことに喜んでいました。

  • 読んでいるところが黄色のマーカーで動くので、どこを目で追ったらいいかわかりやすい。
  • 字が見づらいときに、自分の見やすい大きさに拡大できる。

デイジー教科書を利用すれば、音読が苦ではない様子です。

通常の教科書では読むことが困難な子どもは、デイジー教科書を「無料」で利用できます。日本障害者リハビリテーション協会情報センターのホームページから申請を受け付けています。

<デイジー教科書 一般提供申請方法>

読み書き障害の子どもも使いやすい!聞いて学ぶ「デイジー教科書」 を早く知りたかった

申請方法はホームページには詳しく手順が書かれていますので、心配する必要はありません。家庭でも学校でも、必要な子どもがいつでも使える状態になるのが理想的ですね。

*パソコン・タブレットでの使用に専用ソフトが必要です。

「できることはできるけれど、一般の人には想像できないほど疲れる」

字を読む練習といえば、見る力を育む「ビジョントレーニング」があります。長男も、通級指導教室と、家庭で機嫌がいい時に少しずつやってきました。効果が表れてきたと感じたのは、取り組み始めてから3年ほどたった頃です。

今まで5年ほど、児童精神科の外来や通級指導教室でも何度も「読み書きが難しく、スムーズに読めない」ことを相談してきました。
しかし、長男の「できることはできるけれど、一般の人には想像できないほど疲れる」という悩みに対して、専門家や学校からのアドバイスは「え? でも、時間をかけたらできるのだから、問題ないでしょう?」「もっとできない子はいるから大丈夫」。

この言葉の破壊力は大きいです。気力を削がれます。
平均的な子どもが困らずできることに、膨大な時間と精神力が必要なことがこの子の課題であり、何かしらの配慮が必要なことなのです。ひとこと、「デイジー教科書を使ってみたらどうですか」と言ってくれたらどんなに助かったことか。

非常に素晴らしいサービスがあるのに、こちらから探して、探して、探さないと情報が手に入りません。受け身では、必要なサービスにたどり着くことができないのです。これからも、役に立ったもの、こと、サービスを皆さまと共有し、少しでも生きやすい環境作りが出来るよう願っています。

外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti

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