片頭痛の「予防薬」選び方のポイントは
- 作成:2022/02/26
片頭痛の治療薬の中には、片頭痛が起きてから使う治療薬だけでなく、日頃から定期的に飲んでおくことで片頭痛が起こる回数や頻度を減らす「予防薬」もあります。今回は、この「予防薬」がどういった場合に使うのか、どんな薬が使われるのか、どんなことに注意して使う必要があるのか、といったところを簡単に紹介します。
この記事の目安時間は6分です
片頭痛の「予防薬」とは
片頭痛が起きた場合に「トリプタン」などの治療薬(☞04)を使う……こういった対応だけでは十分に生活上の支障を取り除けない場合、片頭痛を防ぐ「予防薬」を使うことがあります。
「予防薬」は、頭痛のないときから続けて服用しておくことで、片頭痛の起こる回数や頻度を減らす、起こる片頭痛の症状を軽くする、あるいは「トリプタン」などの薬の効きを良くする、といった目的で使います。
片頭痛の予防を目的に使われる薬には色々なものがありますが、日本で保険適用も認められている頻用薬には、主に「ロメリジン」、「バルプロ酸ナトリウム」、「プロプラノロール」の3種類があります(※新しい注射薬についてはまた別項で解説します)。
ロメリジン(例:ミグシス)
「ロメリジン」は、高血圧治療によく使われるカルシウム拮抗薬という分類のもので、日本では最初に保険適用が認められた片頭痛の予防薬です。他の2つの薬に比べると副作用が少なく、また飲み合わせの悪い薬も少ないことから、比較的どんな人にでも使いやすいという特徴があります。
バルプロ酸ナトリウム(例:デパケン)
本来はてんかんの治療に使われる薬ですが、片頭痛の予防にも効果が認められたことで、“片頭痛の予防薬”としても使われている薬です。海外では第一選択薬として推奨度の高い薬ですが、眠くなりやすいこと、また妊娠中の女性は使えないなど、扱いにはやや注意が必要です。
プロプラノロール(例:インデラル)
もともとは不整脈などの治療に使われるβ遮断薬と呼ばれる薬です。他の2つの薬と違って、妊娠中の女性でも選択肢になる薬ですが、気管支喘息や心不全などがあると使えないこと、また片頭痛治療薬の「リザトリプタン」とは併用してはいけないことなどといった注意点がある薬でもあります。
「予防薬」は、どの薬を選ぶのが良いのか?
片頭痛の予防薬には、上記の他にも、抗てんかん薬の「トピラマート」、カルシウム拮抗薬の「ベラパミル」、抗うつ薬の「アミトリプチン」、高血圧治療薬の「カンデサルタン」や「リシノプリル」、その他「ビタミンB2」といった薬が使われることもあります。
ガイドライン1)では使用実績の豊富さなどの観点からある程度の優先順位はつけられていますが、この優先順位のほかにも、薬を使う人の持病の状態や、他に使っている薬との飲み合わせなども重要な判断基準になります(例:血圧の高い人であれば高血圧治療も兼ねて薬を選ぶ、など)。そのため、同じくらいの年齢で似たような症状の人でも、全く違う予防薬を使っている、ということはよくあります。片頭痛の予防には色々な薬が使えるため、そういった個人の事情も踏まえた選び方ができるようになっている、ということです。
なお、月に15日以上の頭痛があるような片頭痛患者でも、46%の人が1種類の予防薬で十分な効果が得られたとする報告2)があります。
そのため、予防薬を使う場合はまずはどれか1つの薬を試す、というのが基本になります。1種類の薬では十分な効果が得られない場合でも、予防薬を2種類に増やすことで90%近くの人で症状が改善する2)とされているため、予防薬は複数の薬を組み合わせて使うこともあります。ただ、十分な効果が実感できるのには2~3ヶ月ほどかかることもあるため、“どの薬を選ぶのか”と合わせて、“根気よくしっかり治療を続ける”ことも同じくらい重要です。また、3種類以上の予防薬を使っても症状が改善しない場合には、耐性や難治性の片頭痛を疑い3)、より専門的な治療を受ける必要があります。
予防薬は、どんな人が、いつまで使う?
片頭痛の予防薬は、基本的に「トリプタン」などの治療薬では十分に満足できるほどの効果が得られない場合や、あるいは片頭痛を起こす頻度が多くて「トリプタン」を月に10日以上使わなければならないような状況になっている場合などに使われます。
特に、痛み止めや「トリプタン」の使い過ぎは薬剤の使用過多による頭痛(☞03)を起こす原因にもなるため、“治療薬を使う頻度を減らす”ことも、予防薬の大きな目的の1つです。
また、そもそも片頭痛の回数が減れば、それだけ頭痛によって生活に支障を来たす頻度も減ります。「トリプタン」を飲めば良くなるとは言え、頭痛を起こすことで仕事や学業に大きな支障がある場合にも、予防薬は選択肢になります。
予防薬を使うことで、片頭痛が月に1~2回程度しか起こらないくらいの状態になれば、片頭痛の予防は成功したと言えます。この状態が2~3ヶ月ほど安定して続けば、予防薬を徐々に減らしていくことも考えますが、これによって片頭痛が悪化することも少なくないため、自己判断で薬の減量や中止はせず、必ず医師と相談の上で行うようにしてください。
1) 日本頭痛学会「頭痛の診療ガイドライン2021」
2) J Neurosci Rural Pract . 2019 Jul;10(3):479-482
3) J Headache Pain . 2020 Jun 16;21(1):76.
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